真央16位 痛かった「3回転ループ」のミス=澤田亜紀のフィギュア女子SP解説

構成:スポーツナビ

鈴木明子、気合いが裏目に…?

ジャンプにミスが出た鈴木。しかし後半は持ち直した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 鈴木選手は最初の3回転−3回転のトゥループに気合いを入れ過ぎた感じがありました。その状態から次の3回転ルッツ−2回転トゥループも心ここにあらずで跳んでしまった。次のスピンを回っている間に切り替えられて、途中からは表現に割り切って演技していたのではないでしょうか。
 明らかなミスでのこの順位でショックだったと思います。FSでは切り替えて、記憶に残る演技をして、頑張ってもらえればと思います。

村上佳菜子、スピンで「レベル1」の理由

最初の3回転−3回転は着氷した村上だが… 【Getty Images】

 村上選手は、3回転−3回転が最初に決まって良かったです。ただフリップは1回転になってしまいました。あまり見ない失敗でしたが、右足のつま先を少し強くついてしまったのかもしれません。それに、五輪に来るまでの練習で、最初の連続ジャンプに懸けていたと思うので、それが決まって安心して、少しフリップへの注意が足りなくなってしまったかもしれません。

 それからスピンは足替えのコンビネーションスピンが「レベル1」と低い評価になっています。コンビネーションスピンは、「キャメルスピン」「シットスピン」「アップライトスピン」の3つがそろわないといけないのですが、そのどれかが足りなかったのかもしれません。
 コンビネーションスピンは先に挙げた3つの各スピンを2周以上回らないといけないのですが、本人の感覚と、見た目の感覚が違うことはよくあります。例えば「キャメルスピン」では、お尻よりも高い位置に脚が上がっていないといけないのですが、本人は回転数のスタート地点だと思った位置が、審判にはそう見なされていなくて、回転数が足りなくなってしまったり。それもあって、スピンはプログラムの中で少し長めに時間を取っていることが多いのですが、今回は元々スピンの時間を短めにとっていたのかもしれないです。プログラムはミスなくできれば、曲から演技が遅れたりしませんが、少しミスがあれば少しずつずれてしまいます。それをもし気にしていて「スピンを早く終わらせないと」と焦る気持ちがあったとしたら、その気持ちは分からないでもないです。

2位ソトニコワは勢い リプニツカヤはまさかの転倒

地元ロシアの17歳ソトニコワが2位に 【Getty Images】

 ソトニコワ選手は、今日はすごく良かったです。高さがある3回転−3回転のトゥループを跳んでいました。演目の「カルメン」は妖艶なイメージだと思うのですが、ソトニコワ選手のは17歳の若さがあふれるエネルギッシュなカルメンでした。スピードにも最後まで乗っていましたし、ステップは勢いがありましたね。今季、今までのSPではポロポロとミスをしていたかと思うのですが、声援に後押しをされているようでした。得点もキム・ヨナが74.92点で、ソトニコワ選手が74.64点と、わずか0.28点差。技術点はソトニコワ選手の方が、0.06点上回っています。キム・ヨナ選手の方が基礎点が高いルッツを跳んでいるのにソトニコワ選手の方がわずかながら高い点を出したということは、FSでもソトニコワ選手がこのままの調子でいけば結果は分からないと思います。FSではキム・ヨナ選手も得点の高いルッツを2本入れると思うので、ベースの基礎点から言えばキム・ヨナ選手の方が優位ですが、勢いもありますし分かりません。

 リプニツカヤ選手は最初の3回転ルッツ−3回転トゥループが良くて、このままいくかなと思っていたら、3回転フリップで力が入り過ぎてしまいましたね。跳ぶ位置もいつもよりリンクの壁に近かったかなと思います。壁が近く跳び急いだために転倒してしまったのではないでしょうか。キス&クライではとても暗い表情でした。金メダルを期待されていてこの結果はショックだったと思いますが、持っているものを出せば分かりません。FSは焦らずに演技してほしいですね。

3位コストナー、演技構成点では満点も

しっとりと「アベマリア」を演じたコストナー 【Getty Images】

 世界ランキング1位のコストナー選手が3位に入りました。日本やロシアの選手に注目が集まる中、たんたんと安定した演技をしたと思います。今まで五輪と相性が悪かった(06年トリノ五輪9位、10年バンクーバー五輪16位)のですが、持っている力をすべて出したなと思いました。
 小柄なリプニツカヤ選手の後で演技したこともあって、体の大きなコストナー選手の演技は映えました。体が大きいとすべての動きが大きく見えるので。
 演技構成点では10点満点が2つ付いています。大きなミスがなく彼女らしさを出した演技をしていて、1位のキム・ヨナ選手、2位のソトニコワ選手に何かミスがあった場合は、もしかしたら優勝するかもしれませんね。

 日本の3選手はFSでは持っている力を出してもらって、悔いない演技をしてほしいです。チャレンジするものはして、力を出し切って。男子FSはミスが多い結果になったので、女子はできるならノーミスで、全員がすっきりした気持ちで終われる試合になるといいですね。

<了>

澤田亜紀/Aki Sawada

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では優勝1回を含め、6度表彰台に立った。シニアでは2004年全日本選手権で、安藤美姫、浅田真央、村主章枝に次ぐ4位に入り、07年四大陸選手権でも4位の成績を残した。5つの3回転ジャンプを跳ぶなど力強いジャンプが持ち味。トレードマークとも言える、氷上での明るい笑顔も人気を呼んだ。11年に現役の第一線を退き、現在は関大を拠点にコーチとして活動している。

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