ミスも想定 羽生チームの金メダル戦略=澤田亜紀のフィギュア男子FS解説
町田、全身全霊の演技も“らしさ”出せず
力を振り絞って熱演する町田 【写真は共同】
ただいつもの町田選手と比べると、ステップが少し小さかったような気もしました。上半身はすごく動いていたのですが、足の動きが鈍くなっていたというか。火の鳥が鳳凰にならずに、火の鳥のままになってしまったと言いますか。この『火の鳥』のプログラムは町田選手にとって2季目で、町田選手なりの思いもあると思います。3月の世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)の代表にも選ばれていますし、帰国してからも練習して、心残りがないようにさらに仕上げていくのではないでしょうか。
高橋大輔、結果6位も集大成の演技へ
明るい表情で演技を終えた高橋 【写真は共同】
技術の面では最初の4回転トゥループが両足着氷になったり、中盤のトリプルアクセルが回転不足になったりと満足の出来ではなかったと思いますが、技術面ではない方の評価、演技構成の面では完成形なのではないでしょうか。集大成になってきていると思いました。採点結果も「91.00点」というすごい点が出ています。
メダル逃したフェルナンデス 痛恨のミス
・3回転以上のジャンプは2種類を2度まで(そのうち1度は連続ジャンプ)
・連続ジャンプは最大3度まで(3連続ジャンプはそのうち1度まで)
※一部ルールのみ抜粋
でも連続ジャンプを3度跳んだ後に、2度目の3回転サルコウを跳んでしまいました。2度目の3回転サルコウはルール上、連続ジャンプとして扱われてしまいます。それがルール違反となる「4度目の」連続ジャンプになってしまい、その分が無効=得点なしになってしまったんです。演技予定はもちろんルールにそってつくりますが、途中で4回転を予定していたサルコウを3回転にしたことで影響が出ました。
他は良かったのに、このミスで得点も損することに。今回銅メダルを獲得したテン選手とは3点の差もないので、それさえなければSPのまま3位に入った可能性は高かったと思います。ただフェルナンデス選手は22歳とまだ若いですし、この経験を次に生かしてほしいと思います。
一方で銅メダルのテン選手はできることを淡々とやりましたね。シーズン序盤はケガも抱えていたようなので、その影響もあってか、最初に4回転1本とトリプルアクセルなどのジャンプを3本入れていました。体力のある序盤に、得点源となるジャンプをしっかり跳んでおこうという作戦だったんだと思います。この3本を終えたあとのステップでは笑顔が出ていた気がします。
アボット選手は今回唯一、減点をもらっていないんではないでしょうか。SPでは転倒で腰の辺りを強く打つアクシデントがありました。そのこともあって最初のトゥループは4回転ではなく3回転にしていました。その分、余裕があって、他のすべてが良くて、見ていると引き込まれるようなとても雰囲気のある演技でした。音の強弱がすごく表現できていました。
今回は出場した選手たちにとって、「これで満足できた」という大会ではなかったのではないでしょうか。年齢さえ関係なく言えば、また来年頑張らないとと思うような大会になったような気がします。
<了>