混迷ユナイテッドが見せた「3つの顔」 モイーズが示すべき“正しき道”とは?

河治良幸

散発、偶発に頼らざるを得なかったアーセナル戦

新加入のマタも力を発揮できず途中交代。香川が出たとしても今のユナイテッドの戦い方では活躍は……? 【Getty Images】

 前半から多少、変わったのは2トップを目掛けたロングボールに応じて、マタとバレンシアが高い位置に飛び出して絡もうとする動きが出てきたぐらい。ハイボールをめぐって170センチのマタが長身のコシールニーと屈強なサーニャに挟まれた場面は滑稽ですらあった。結局、アーセナルの運動量が落ちてきた後半30分にマタを下げてヤヌセイ、7分後にはバレンシアからヤングと、左右のウイングを交代してクロスの供給源を確保したが、相手のDFラインを打開できないまま。

 皮肉だったのは、後半最大のチャンスだ。自陣から縦に出たボールをファン・ペルシーが約40メートル運び、ルーニーの浮き球のパスにヘディングで合わせた形だったこと。GKシュチェスニーがワンハンドで弾いたボールがクロスバーに嫌われ、起死回生のゴールとはならなかった。ちなみに前半の立ち上がりには、アルテタのロストしたボールを奪ったファン・ペルシーがゴール前まで持ち込んだ惜しい場面があった。もちろん、そうした散発的なチャンスをファン・ペルシーやルーニーが決めてしまえば勝利できるのがサッカーだが、そうした偶発性の強い形に頼らざるを得なかったのが、この試合の真相だろう。

現状のままでは、香川が起用されたとしても困難

 試合後、アーセナルのベンゲル監督は「結論から言えば勝利できる試合だった」と悔しさを表したが、前節でリバプールに1−5と大敗していたこともあり、守備面でユナイテッドにほとんどチャンスを作らせず、無失点で終えたことには満足しているようだった。言い換えれば、ユナイテッドの攻撃は守備に不安を抱える相手にとっても守りやすかったということだ。

 要するにボールを持てばサイド攻撃に頼り、ボールを持たなければサイド攻撃すらできず、一発のカウンターかロングボールに頼らざるを得ない。かといってフィジカルで押し切れるわけでもない。モイーズ監督は地元メディアに「正しいことをやり続けることだけ。続けていれば運が向いてくる」と語っていたが、強豪との試合では指揮官が“正しい”と示すような戦い方すら見せられなかった。

 すでにFAカップで敗退しているユナイテッドは今週、中東のドバイでミニキャンプを張るが、そこで何を修正し、改善させて来週末のクリスタル・パレス戦、さらにはCLのオリンピアコス戦に向かうのか。マタが出場できない(今季はチェルシーですでに出場したため)オリンピアコス戦は香川にとっても存在価値を示すチャンスだが、サイド攻撃に終始したフラム戦も、カウンターから2トップに頼る形となったアーセナル戦で仮に香川が出場していたとしても、状況を大きく変えることはできなかったのではないか。

 モイーズの掲げる“正しいこと”に少なからず変化をもたらされなければ、ユナイテッドが上昇気流に乗り、その中で香川が輝くことは難しい。

<了>

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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