ペースつかめず失点……もっと泥臭く=元アイスホッケー女子代表監督が解説

構成:スポーツナビ

黒星スタートのスマイルジャパン。格上のスウェーデンに善戦するも1点が遠かった 【写真は共同】

 ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子日本代表(愛称スマイルジャパン)は9日(現地時間)、予選リーグB組の初戦で世界ランク6位のスウェーデンに0−1で敗れ、黒星スタートとなった。1998年長野五輪以来の大舞台、スマイルジャパンは強豪相手に善戦したが、序盤に喫した1点が重くのしかかり、無得点のまま試合終了を迎えた。
 スマイルジャパンの初戦、どこに問題があり、どう改善すればいいのか。かつて女子日本代表監督を務め、女子チームの強豪SEIBUプリンセスラビッツを率いる八反田孝行監督に聞いた。

自分たちの時間が少なすぎた

 この試合を見て最も強く感じたのは、自分たちのペース、リズムで進める時間が少なすぎたことです。第1ピリオドはファーストセットが攻め込まれてリズムをつかめず、第2ピリオドも開始早々にあわや失点というピンチがありました。DF陣の動きが硬かったですね。緊張感か、あるいはスウェーデンのFWを意識しすぎたのか、パックコントロールに苦しみ、パックを簡単に失う場面が目につきました。「自分たちがしっかりやらなければ」という責任感が逆にプレッシャーになったような印象を受けました。

 第1ピリオドは立ち上がりからスウェーデンのペースが続いていたのですが、GK藤本那菜の好セーブもあってペナルティーキリング(数的不利)を乗り切れました。10分以降は、パワープレーのチャンス(数的優位)を迎えるなど、このあたりから徐々に日本は自分たちのペースでプレーできるようになってきました。それだけに失点がもったいない。

 FWがコーナーに深追いしたことでバランスを崩し、逆に余裕が出たスウェーデンはDFが狙い澄ました強烈なシュートを放ちました。これをゴール前でコースを変えられての失点です。判断ミスとまでは言いませんが、ちょっとした隙を与えると、このレベルでは失点につながってしまう。非常にもったいないですね。自分たちのペースに持っていこうとした矢先ですから、なおさらです。結局、この1点が決勝点になってしまいました。

パワープレーに持ち込むために

 一方、攻撃に関して言えば、得点を挙げるのは簡単ではないですね。特に第1ピリオドはパワープレーでないとチャンスを作れないのでは、と感じたくらいです。ただ、パワープレーはこの試合4回あって、得点のチャンスも作れました。活路を見いだすとすれば、パワープレーでしょうか。

 そのためには相手の反則を誘って、パワープレーに持ち込む必要があります。そこで日本の素早さ、粘り強さを発揮してほしい。スピードを生かしてフェンス際を抜けたり、パックを持って前に進んだりすれば、相手は嫌がってペナルティーを犯すかもしれません。そうすればパワープレーです。こうして1つでも多くの反則を誘って、パワープレーの機会を増やせば、得点の確率を上げることができる。強豪相手に戦うには、そういった積み重ねが大切です。

 もうひとつ、日本はニュートラルゾーンでのホッケーがあまり良くないですね。そこでしっかり攻撃を組み立てることがなかなかできません。パックをゴール前に放り込んでも、二番手、三番手が続かなかったり、パックを持っても一人で孤立してしまったり、という場面が多い。日本はパックを持っていない時、フォアチェックなどの動きは速いんですが、パックを持つと途端にスピードが落ちてしまいます。チャンスを作るには、パックを持った選手がもっと走って仕掛けることと、パックを持っていない選手が空いたスペースに飛び出すことが必要です。

勝つための先取点が必要

 日本のスタイルとしては、フォアチェックからパックを奪ってゴールを目指すわけですが、そもそもアタッキングゾーンに入る機会が少なく、得意の形に持っていけませんでした。そういう意味でも、ニュートラルゾーンでしっかり人数をかけてプレーしたい。パックをつなげればつないで、つなげなければゴール前に放り込んで、二番手、三番手が追うと。残念ながら、この試合ではあまり見られませんでした。

 次は11日のロシア戦です。DF陣は自分たちの力が発揮できるように、必要以上に気負わず、精神的にリラックスした状態で臨むこと。FW陣には泥くささ、しつこいプレーを求めたいですね。日本はどうしてもパックをきれいにつなごうとする傾向がありますが、それだけでは通用しません。多少強引でもいいから、パックに食らいつく気概を見せてほしい。

 格上とはいえ、日本は接戦はできると思います。そこからどう勝ちに持っていくか。まずは自分たちのペースでゲームを進める時間を長くする。そして、なんとしても先取点を取りたいですね。五輪最終予選やロシアとの強化試合では、先制されても追いついたり、逆転したり、といったこともありましたが、このレベルでは難しい。勝つための先取点が必要です。

<了>

八反田孝行
SEIBUプリンセスラビッツ(旧国土計画・コクドレディース)監督。現役引退後、同クラブのコーチ、監督を歴任し、全日本選手権優勝5回、準優勝10回に導く。2012年には第1回女子日本アイスホッケーリーグ初代王者に輝いた。13年は連覇を達成。日本代表では92年からコーチを務め、98年長野五輪を経験。99年に監督に就任すると、アジア大会、世界選手権などの国際大会でチームを率いた。02年ソルトレークシティー五輪出場を懸けた予選で敗退し、代表監督の座から退いた。
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