日本に今必要な「スポーツボランティア」=市民が参加するイベントになるために

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

東京五輪でボランティアに選ばれるには?

東京五輪でボランティアに選ばれるために必要なこととは? 【スポーツナビ】

 休憩を挟んだ後、第2部ではフォーラム参加者の質問に宇佐美氏、東氏が答えた。質疑応答の内容は以下の通り。

――まず、ボランティアに参加するにはどうすればいいのか分かりません、という質問です。

東氏「パソコンで『スポーツボランティア』と検索すると、『日本スポーツボランティアネットワーク』が出てきます。私どもは、会員であるスポーツボランティア団体の情報を掲載していますので、自分でこれならできそうだなというものに問い合わせをしてください。私どもは主催団体がしっかりしているところしかご案内しませんのでご安心ください」

――2019年ラグビーワールドカップや2020年東京五輪にボランティアで参加したいという人がたくさんいると思います。この5年、6年でどうすればこういった大会のボランティアに選ばれる人になれるのでしょうか?

宇佐美氏「まだ東京オリンピック・パラリンピックにおいては、組織委員会ができたばかりですので、ボランティア募集の道筋はまだ協議されていません。
これまでの経験をもとにお話ししますと、ボランティアは人数だけ揃っていても仕方ないのです。スポーツができます、時間があります、英語ができますという方が集まっても機能しません。スポーツボランティアの本質を理解し、知識や技術がある方。もちろんやる気があり、スポーツボランティアを楽しく長く続けられる方が求められると考えています。
 何が必要なのかを伝えるために、スポーツボランティア研修会を開催しています。一般の方を対象に関心のある方に学ぶ機会として提供しているのが、スポーツボランティア研修会です。そこで、スポーツボランティアの基本的なところを身につけてもらいます。そして、その中から志のある方がスポーツボランティアリーダー養成研修会に進みます。これがオリンピック規模となると何千人のリーダーが必要となる。そうすると、今度はリーダーを取りまとめる上級リーダーが必要になってきます。さらに、取りまとめ役として、コーディネーターという存在が必要となります。日本スポーツボランティアネットワークは、市民が望む形で自発的に学び、活動する階層を設けることによって円滑な運営を日本スポーツボランティアネットワークで行っています」

競技の知識は必要ない、でも語学力は有利

――上級リーダーやコーディネーターにはどうすればなれるのでしょうか?

東氏「特にコーディネーターさんによりますと、いろんな専門的な知識や、イベントとしての総合的なことまで関わってきます。例えば五輪で言えば東京都との関係だとか、組織委員会との関係だとか、文科省との関係だとか、ある程度把握できるような力がないと困る。ただこれから6年先のことを考えると、いろんな種目に関わって経験を積んでいくこと。おそらく今までの経歴書を出すと思うんです。そこにしっかりと書ける、こんなことをやってきましたという人の方が、当然ボランティアをリストアップして実際に活動していく場合には断然有利だと思います。今から少しずつ準備しておかれるといいと思います。しかし、そうですね、五輪はあと6年後ですけど、今ここに80歳以上の方はいらっしゃいますか? 80歳以上だとほぼ難しいかなと。それ以外ならばいろんな仕事がありますので、どのような活動ができるか、切符のもぎりや座席案内とか道案内とか非常時誘導だとか、そういうことも含めていろんな経験を積んでいる方がいいかなと。これはやっていればやっているほどチャンスは広がると思います。ぜひ80歳以下の方はお勧めしますので頑張ってみてください」

――関連した質問で、一般ボランティアに競技の知識はどれくらい必要でしょうか? という質問です。

宇佐美氏「イベントのボランティアには、審判や医療などの専門ボランティアと、一般市民が参加できる一般ボランティアがありますので、専門的な競技経験がなくてもできると考えてください。一般ボランティアの活動は、その場で手を挙げて集まってくれた方ができるような活動が中心です」

――それに関連して語学のことなんですが、通訳じゃない方で語学はどれくらい有利になるのか、という質問です。

宇佐美氏「語学を含む活動条件は、主催者の定めとなりますので一概に言えません。通訳に限らず、ある一定の取りまとめをする方であれば、全ての方とコミュニケーションをとることが必要となります。当然、語学を壁と感じることのないレベルとなるでしょう。語学が壁となるのであれば、活動範囲に制限が生まれるかも知れません。色々な方とコミュニケーションを図る一つの手段として、前向きに考えるとよいのではないのでしょうか」

――これまでのイベントで何語が足りなかったとか、そういうのはありますか?

東氏「4年前に三重県で新体操の世界選手権を開催し、役員として2週間関わりました。新体操は、共産圏・旧共産圏が圧倒的に多いので、ロシア語やブルガリア語などを使う方もいました。各国に対応する専門の語学ボランティアが活動していましたが、ほとんどは英語でコミュニケーションを図っていました。ただ、ロシア語のメディアの人は、都合が悪くなるとロシア語でしゃべり、うまくできてるなぁという経験をしました。ラグビーワールドカップですと、特殊な言葉の国はあるのでしょうか?(参加者から『ロシア』の声)やっぱりロシアですか(笑)」

ボランティアへの報酬の実態

ボランティアの“報酬”について語る東氏 【スポーツナビ】

――視点は変わりますが、クオリティーの高いボランティアの育て方の注意はありますか? ボランティアになっただけでえらくなった気になってしまう人がいますが、その方の注意はどうしたらいいですか?という質問です。

宇佐美氏「ボランティアに、そのイベントや属するスポーツボランティア団体に愛着を持ってもらうことだと思います。双方の意見に耳を傾けることにより、お互いが求めることの理解につながるのではないでしょうか。また、ボランティアへの注意の仕方は、リーダーからと主催者からの二つの方法があると思います。
 ボランティアの仲間作りについての事例です。ボランティアはすぐ仲間作りができる反面、継続的な活動となると、新しいボランティアがボランティアの輪に入れなくなることがありました。本人たちは悪気ないのですが、仲間が集まるとどうしても新しい人が入る雰囲気を作れず、自分たちが楽しむだけの環境となっているのです。これには主催者が意図的に活動場所を変えることや、講習会などでボランティアリーダーに事前に好循環を促すなどの対応方法を伝えているところです」

――関連して、困ったボランティアの事例を教えてください、という質問です。

宇佐美氏「リーダーが、過去とまったく同じやり方を押し通してしまうことです。例えば、給水係では、作業内容はほぼ変わらないのですが、昨年はこうだったから、と決めつけることなく、その環境に合った柔軟な方法を見いだしてほしいとお願いしています」

――ボランティアの支払いはどういうものなんでしょうか? という質問です。ボランティアとはいえ、交通費だったり一部有償ボランティアとかいろいろあると思いますが、実際のところはどうなんでしょうか?

東氏「ボランティアは、無償の活動です。報酬を目的とした活動はボランティアではありません。活動によっては、交通費や食事代が手当てされることがありますが、その内容によって主催者の良し悪しではありません。ただし、ボランティアから人気のあるボランティアウエアが支給されると、モチベーションが上がるのは事実です。モノや思い出として残るものがあると、イベントのイメージ向上やボランティア活動のリピーターとなるでしょう」

――ウエアというのはだいたいどんなボランティアでももらえるものなんでしょうか?

東氏「これは主催団体の予算により大きく異なります。もし選手が着たジャージをもらえるならば、全国から人が集まってしまいます。ウエアを支給された場合、用意してくれたお揃いのユニフォームを身にまとって活動しようとボランティアに伝えてあります」

スポーツボランティアで得られる感動

――開催期間中すべてに参加できないとボランティアとして応募してはいけないのでしょうか?という質問です。

宇佐美氏「私は、自身の生活や仕事に影響を及ぼしてまで行う活動は、望ましくないと思います。できる範囲で活動することがボランティアだからです。主催者は、募集人数や期間などを考慮して、募集を行ってほしいと思います」

――スポーツボランティアをやって得られるものは何でしょうか? という質問です。私自身、ボランティアの経験はそんなにないのですが、ファンとしてうれしかったのは2002年サッカーワールドカップのロシアとの試合だったと思いますが、横浜国際スタジアムで日本が勝ったときに、帰りの出口にボランティアの方がたくさん並んでいて、みんなでハイタッチをしながらファンが帰っていく。今考えても鳥肌が立つようなあの瞬間にいられたボランティアの方も良かったし、あの瞬間に何十人のボランティアとハイタッチできたサポーターもそうですし、たぶんスポーツはテレビで見た方が分かりやすいと思いますが、スタジアム観戦ってこうなんだなというすごい経験がありました。同じようにスポーツボランティアの立場として、ここがいいぞ、こんな経験はまずできないぞ、ということを教えていただければと思います。

宇佐美氏「私は、視覚障害者と伴走するボランティア活動をしています。10マイルを約2時間かかる選手と2、3年ご一緒していますが、毎回一緒にゴールする瞬間は感動します。自分自身が走ってゴールしてもあそこまで感情は高ぶらない。人と一緒に活動したからこその感動だと思います。この違いがアルバイトとボランティアだと感じています。
 スポーツは、先ほどもご紹介したように『プレーする』『観戦する』そして『支える』という分野から成り立ちます。スポーツというものはモノではなく、自身が汗をかく、眼で見る、心で感じることです」

――最後に、ラグビー協会の方へ。ラグビーワールドカップでのボランティア採用のロードマップがあれば教えてください、という質問です。

ラグビー協会「具体的にはまだスケジューリングはされておりません。これまでのケースですと、2年ほど前くらいからご紹介して、1年ぐらい前からさまざまなトレーニングなどをしていく形になりますので、2019年ワールドカップですと、2017年ぐらいをメドにおそらく募集を開始するような形になると思います。そちらの方はこれから組織委員会の中で詳細を決めていくことになると思います」

あなたにとってラグビーとは?

宇佐美氏「『オールフォアワン、ワンフォアオール』ですね。あれは最高の、どの部分でも通用するものなんじゃないかなと思います。素晴らしいチームワーク作りの土台ですね。これの一言だと思います。個人競技では味わえないスパイスですね」

東氏「日本のラグビーを取りまとめる方々は、ラグビーの愛好家をサポーターではなく、もっと主体的な『あなたはラグビーを盛り上げるスタッフ』『JAPANを支えてくれるスタッフ』という想いで関わることができれば、もっとラグビー愛好家が熱くなり、ファンが増えていくのではないかと思います。2019年のワールドカップが楽しみです」

協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会

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