女子版レジェンド、金メダルコレクター……要チェック!世界のスゴイ強豪たち

折山淑美

沙羅のライバルに名乗り “女子版レジェンド”イラシュコ

高梨沙羅(左)のライバルとして名乗りを上げたイラシュコ(中央)。1月末のW杯プラニツァ大会で沙羅を破っている(右はドイツのフォクト) 【Getty Images】

 開幕直前になったソチ五輪。高梨沙羅が大本命と言われる女子ジャンプだが、女子版レジェンドともいえる30歳のダニエラ・イラシュコ(オーストリア)には警戒が必要だ。昨季の冬に膝の靱帯(じんたい)を痛めてから試合に出ていなかった影響で、今季のW杯は出足が鈍かった。だが1月25日からのプラニツァ(スロベニア)では、彼女がそこで練習を積んでいたという利点もあったが、改装した新しいプロフィールのジャンプ台で、高梨に圧勝した。

 イラシュコは女子ジャンプ初の国際ツアーだった1999年のレディスグランドツアーにも15歳で出場して総合3位になり、その後は総合3連覇。2003年も1試合の欠場がなければ総合優勝を果たしていた実力者だ。サッカーでもオーストリアのFCヴァッカー・インスブルックのゴールキーパーとして所属している。

 11年世界選手権(ノルウェー・オスロ)では濃い霧でスタート位置からはカンテ(踏み切り位置)が見えないような悪条件の中で優勝し、経験値の高さを見せつけている。長い間に積み上げた実績もあり、悪条件になったらとんでもない強さを発揮してきそうな選手だ。

男子ジャンプ、“怪物”超えの24歳シュリーレンツァウアー

男子ジャンプのシュリーレンツァウアー。五輪ではまだ手にしていない個人金メダルを狙う 【Getty Images】

 日本勢のメダル獲得が期待されるスキージャンプ男子での注目選手といえば、抜群の身体能力を武器に勝利を重ねているグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)だ。16歳11カ月だった06年12月のリレハンメル大会でW杯初勝利を挙げると、昨季は1980年代に“怪物”と称されたマッチ・ニッカネン(フィンランド)が89年1月1日に記録したW杯最多勝利記録46を更新。今季はそれを52まで伸ばしているのだ。

 五輪は前回のバンクーバー大会が初出場で、金メダルはラージヒル団体のみ。個人2戦はともに銅メダルだった。07年から4大会連続で出場している世界選手権も金メダル6のうち5個は団体で、個人は金1(11年オスロ/ラージヒル)、銀2(09年リベレツ/ノーマルヒル、11年ヴァルディフィエンメ/ノーマルヒル)。さらに今季のW杯では序盤の2勝のみで総合ランキングも2月3日時点では4位に甘んじているが、第2戦のクーサモでは1本目15位から2本目に完璧なジャンプで逆転優勝するという、すさまじい勝ち方を見せている。ここしばらくはおとなし目だが、そろそろ本領発揮となってもいい頃だ。

 さらにこのジャンプには、“レジェンド・葛西紀明”に引けをとらない、五輪2大会2冠のシモン・アマン(スイス)もいる。快挙をなし遂げたのは02年ソルトレークシティー五輪と2大会後の前回バンクーバー五輪。そのサイクルでいくと今回はお休みと思われ、W杯序盤戦もそれほど調子は良くなかった。だが昨年末のジャンプ週間開幕戦のオーベルストドルフ(ドイツ)で32歳6カ月の勝利を挙げると、その後の2戦も表彰台に上がり、4試合の得点合計で競うジャンプ週間総合3位と一気に調子を上げてきたのだ。

 前回のバンクーバーでは、それまで外側に開いていたスキーの下面を、地面と平行に近くして浮力を得るためにビンディングの金具を曲げて付けるという工夫をしてきたように、道具の研究も熱心な選手。他の選手たちが、「今回も驚くような秘策を持ってくるかもしれない」と警戒するベテランだ。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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