姉&弟のアイスダンス日本代表リード組 ケガ乗り越え、五輪へ「100%集中!」

長谷川仁美

五輪へ集中「これが最後の練習」という気持ちで

「これが最後の練習という気持ちで」。笑顔の中にも、強い気持ちを口に 【スポーツナビ】

―――そうしたことを学んだ後のソチ五輪ですね。「ソチ五輪で(合計で)150点以上の得点を出したい」と言っていましたが、そのために五輪までに何をしますか?

クリス「集中して練習していきます」

キャシー「『これが最後の練習』『これは試合だ』といった気持ちで100パーセント集中して、ツイズルでもステップでもレベル4(最高難度の認定。演技を見て技術審判が判定するため、自分たちがレベル4だと感じても認定されないことも多い)を取れるように、毎日一生懸命に練習します。アイスダンスのステップでレベル4を取るのは、とても難しいんです。エッジを倒しきったところからステップシークエンスに入っていって、次のエッジに変える直前までそのエッジを倒しきった状態のままキープしていかないとレベルが落ちてしまいます。フラット(エッジが倒れていない垂直な状態)でステップシークエンスに入って、そこからエッジを倒していったのでは、レベルは取れない。二人の身体の流れや向きが変わってしまうと、エッジの向きも変わってしまうので、ビデオで撮影して研究しながらやっていきます」

―――レベルを取れる練習をして臨むソチ五輪。どんな演技を見せますか?

キャシー「ソチ五輪という一番の場で、一番良い演技をしたいと思います。演技を終えたときに、『あー、一番良い演技ができたなあ』って思いたい。国別対抗戦(2013年4月)のフリーで感じたような素晴らしい気持ちを、また味わいたいと思います。身体とメンタル、すべてのことが相乗した演技です」

ダイスケのスピーチ、織田引退に涙

全日本選手権後、引退を表明した男子シングルの織田信成。キャシーとクリスも、織田を慕う 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――そう言えば12月の全日本選手権の最終日、リンク上での五輪代表発表の場で、クリスさんは「今シーズン、今シーズン、今シーズン」と言って口ごもっていました。あのとき、何かあったのでしょうか?

クリス「事前にスピーチ内容を考えていたんですけど、僕の前にダイスケ(男子シングル代表に選ばれた高橋大輔)がしゃべっているのを聞いたら胸がいっぱいになって、泣きそうになってしまったんです(笑)」

――織田(信成)選手も引退しましたね。

キャシー「そう、メダリスト・オン・アイス(全日本翌日のエキシビション)のときに引退を発表して。私はあの後、すごく泣きました。とても寂しいです。織田くんは本当に友達。何年も前、ニコライ(・モロゾフ)のところで、一緒にトレーニングをしていたこともありました」

クリス「織田くん、とても楽しいです。僕も寂しいです」

五輪後の道「まだ引退する時期ではない」

五輪はもちろん、日本での世界選手権出場にも、二人は胸を躍らせている 【坂本清】

――ソチ五輪のあと、3月には世界選手権がさいたま市で行われます。(二人の表情が笑顔に)うれしそうですね。

二人「はい!」

キャシー「だって、日本代表になってすぐの07年の世界選手権(東京)は、別の組が代表だったので出られなかったし、11年の世界選手権は、東日本大震災の影響から開催地が東京からモスクワに変わったので、私たちにとって初めての日本での世界選手権になるんです。楽しみです!」

クリス「日本のファンはすごいです。応援、本当にうれしいです」

――今シーズンで引退する選手も多いですが、お二人は世界選手権の後のことは、何か決めていますか? 

キャシー「まだ特に決めていません。今はまず、ソチ五輪と世界選手権へ向けて一歩一歩ですから。でもきっと、クリスは膝を診てもらって、バケーションも少し取って、ですね」

――来シーズンのショートのパターンダンスは、キャシーさんの好きなパソ・ドプレですしね。

キャシー「はい、楽しみです。来シーズンも続けたいですね。まだ引退する時期ではないと、私は思っています」

<了>

キャシー・リード、クリス・リード組プロフィール

姉キャシー(右)と弟クリス 【スポーツナビ】

姉キャシーと弟クリスでチームを組む、ソチ五輪フィギュアスケートアイスダンス日本代表。日本人の母と、米国人の父のもと米国で育ち、キャシー7歳、クリス5歳のときに、シングルスケーターとして本格的に競技開始。7年後の2001年、そろってアイスダンスに転向した。シェイ=リーン・ボーン、ニコライ・モロゾフらの指導を受け、06年米国選手権ノービス部門(シニア、ジュニアに続くランク)で優勝。その後、日本代表として世界選手権(08年〜13年)、GPシリーズ(07〜13年)、四大陸選手権(07〜09年、12年)などの国際舞台で経験を重ね、2010年のバンクーバー五輪にも出場。昨年12月の全日本選手権では2年連続6度目の優勝を飾り、ソチ五輪代表を決めた。
姉キャシー、1987年6月5日生まれの26歳。弟クリス、1989年7月7日の24歳。木下クラブ所属。今季プログラムは、ショートダンス『踊るリッツの夜/ハーレム・ノクターン』(振付:イゴール・シュピルバンド)、フリーダンス『Shogun』(振付:イゴール・シュピルバンド)。

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著者プロフィール

静岡市生まれ。大学卒業後、NHKディレクター、編集プロダクションのコピーライターを経て、ライターに。2002年からフィギュアスケートの取材を始める。フィギュアスケート観戦は、伊藤みどりさんのフリーの演技に感激した1992年アルベールビル五輪から。男女シングルだけでなくペアやアイスダンスも国内外選手問わず広く取材。国内の小さな大会観戦もかなり好き。自分でもスケートを、と何度かトライしては挫折を繰り返している。『フィギュアスケートLife』などに寄稿。

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