ピアースとガーネットが過ごした特別な夜 古巣ボストンで永遠に語り継がれる思い出

杉浦大介

単に強かっただけではないセルティックス

ネッツの精神的支柱として打倒マイアミ・ヒートを目指すガーネット(右)。ボストン時代の優勝を再現できるか 【Getty Images】

 ネッツがセルティックスの本拠地を今季初めて訪れたのは、そんなタイミングだった。“昨日の友は今日の敵”。かつての功労者も今では地区ライバルの主力選手だけに、ブーイングが送られても不思議はない状況にも思える。それにもかかわらず、普段は地元選手に無償の愛を注ぐボストンの人々は、ピアース、ガーネットになぜあそこまで盛大な拍手を送ったのだろうか……?

「(セルティックスOBで元スーパースターの)ラリー・バードは、『ボストンの人々を欺くことはできない。彼らはハードワークの意味を分かっているし、バスケットボールを理解している』といつも言っていた。実際にその通りだった。あの街の人々は全力でプレーしていることを分かってくれて、支えてくれる。今でも覚えていてくれているはずだ」

 ガーネットのそんなコメントの中に、きっと答えはあるのだろう。

 07年にレイ・アレンも含む“ビッグスリー”が誕生して以降、新陳代謝の激しいNBAでは永遠にも思える6年という長きに渡って、セルティックスはバスケットボールファンを楽しませてくれた。6年間で5度も地区制覇、ファイナル進出は2度。それでも、単に強かったというだけなら、このチームは人々の胸をそこまで打ちはしなかったはずだ。

 ピアース、ガーネットが中心となったセルティックスは、チームスポーツに不可欠な自己犠牲の精神を体現する仕事人集団だった。スター選手たちがエゴを捨て、ボールをシェアし、足りないものを埋め合いながら進んで行った。

1つだけ変わらないこと

 ラリー・バードはおそらく正しい。賢明なガーネットも気付いている。“ビッグスリー”時代のセルティックスは、チーム一丸となってハードワークを続けることで、地元ファンに忘れられない思い出をプレゼントしたのである。

 感動的だった27日のセレモニーが、とりあえずの最終章。これから先、ピアースとガーネット、セルティックスはそれぞれの方向へ進んでいくことになる。2人のベテランはネッツの精神的支柱として打倒マイアミ・ヒートを目指し、セルティックスはレイジョン・ロンドを中心とした新たなチーム作りをもくろむ。

 ただそれでも……1つだけ変わらないことがある。どれだけの年月が経とうと、ピアースとガーネットは今後もボストンでは温かく迎えられ続けるのだろう。08年に勝ち取った優勝も、人々の心の中で永遠に輝き続けていくのだろう。

 冒頭のガーネットの言葉通り、いくつかの希有な物事は記憶され、語り継がれることによって、いつしか時を超えて行くのである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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