本田、新生ミランのカギを握る存在に。新指揮官セードルフの哲学の下で
前線4人の中でも、堂々と存在感を示した本田
19日のセリエA・ヴェローナ戦で先発出場を果たした本田圭佑 【Getty Images】
本田、カカ、ロビーニョ、そしてバロテッリを加えた前線の4人は流動的に動き、細かくパスを回した。サイド、あるいは中央に固定されることなく、ボールサイドに寄って積極的にコンビプレーを仕掛ける。簡単にボールは奪われず、仮に奪われても高い位置からプレスがかかるので、前半から試合の中ごろにかけては完全にベローナ陣内だけで試合を展開していた。
本田もまた、その中で堂々と存在感を示していた。相手の守備ゾーンの間に顔を出してボールをもらっては、素早くそれをはたいて周囲を動かす。もちろんシンプルにプレーするのみならず、繊細な左足の技術も存分に生かした。前半9分、右サイドに流れたところから柔らかいタッチで浮き球のパスを放ち、前線に飛び出したカカの頭へ正確に通した。
そして自らも、周囲にパスを預けてゴール前へと走り込む。17分には前線に飛び出すと、オーバーラップしたマティア・デ・シリオから完璧なタイミングでボールを呼び込む。ただしトラップは乱れ、シュートに行く前にボールは逸れてしまった。その他にも本田はカカやロビーニョ、バロテッリともワンツーを狙い、積極的に仕掛けを試みた。まさに「攻撃にできるだけ人数を割き、自分たちが楽しみ、そして観客を楽しませるサッカー」とセードルフ監督が語った哲学通りのプレーだ。
もっとも、徹底的にボールを支配しても前半の得点はゼロ。まだフィジカルコンディションを上げている状態の本田も、63分間プレーした後にお役御免となり、ヴァルテル・ビルサと交代してベンチへと下がった。
「ミランはボールの後ろを追いかけ回さない」
だがセードルフ監督は「前半は前線からしっかりとプレスもかかり、相手陣内でプレーができていた」と、コンセプト通りのサッカーを実行していたことへの満足感をはっきりと表明していた。試合後の記者会見では「同じトップ下ばかり並べるのは非効率ではないか、サイドアタッカーの補強などは願い出ないのか?」と暗にこの4−2−3−1と、本田をトップ下に据えたことへの疑問を投げかける質問も出てきたのだが、それに対してこうはっきり答えた。
「クオリティーのある選手を多く前線に起用して、プレーの喜びを追求するアプローチにしようとわれわれは決めた。そして前線の選手たちには高い位置からのプレスのほか、細かいパス交換やドリブルなど、多少のリスクはあっても積極的に行くことを要求した。ミランはどんな相手であろうと、ボールをキープし主導権を握るサッカーをすべきクラブ。ボールの後ろを追いかけ回すことは、あってはならないのだ」
そのコンセプトの中心として、セードルフが本田の繊細な技術を使おうとしていることは、この試合でよく分かった。あとは「まだフィジカルを作り直している最中で、負荷にも気をつけて故障を回避させなければならない」(セードルフ)という本田のコンディションがいつトップに近づくか、そして前線での連係を深めて行けるかが、今後の注目点となる。
<了>