F1“主役”たちの動向 赤井邦彦の「エフワン見聞録」第20回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

返り咲いたロン・デニス

 エクレストンのステップダウンとは反対に、昔のポジションに返り咲いた大物もいる。マクラーレンのロン・デニスだ。今年67歳になるデニスは09年限りでマクラーレンF1チームのCEO(最高経営責任者)を退き、12年にはマクラーレン・グループのCEOも辞め、マクラーレン・オートモーティブ(※マクラーレンの市販車部門)の代表に就いていた。だが、13年のF1チームの体たらくを見て我慢も限界にきたのだろう。自らマクラーレン・グループのCEOに返り咲き、F1チームを彼の権限下に置いた。

 となれば、デニスの後継者として過去4年間CEOとして働いて来たマーティン・ウィットマーシュの身の振り方が注目される。デニスとウィットマーシュの関係は過去2年間最悪だったことはよく知られている。デニスがウィットマーシュを退任させようとしながら、取締役会の反対にあってそれができなかったとも言われる。それがここに来て突然なされたわけだ。

 しかし、デニスはまだウィットマーシュの将来には言及していない。マクラーレンに残り、これまでとは異なったポジションで働くのか、チームを離れるのか? ウィットマーシュ本人からもコメントはない。ただ、デニスは昨年12月にメルセデスを辞したロス・ブラウンと会って話をしている。もしかするとブラウンがマクラーレンに加入してチーム代表に就く可能性もある。そうなればウィットマーシュは当然チームを離れることになるだろう。

 デニスの怒りも理解できる。マクラーレンは13年、1980年以来初めて一度も表彰台に上らないシーズンを送った。最高位はジェンソン・バトンの4位(ブラジル)。バトンとセルジオ・ペレス2人のポイントを合わせても122点にしかならず、チームランキングは5位と低迷した。この状況から脱出するためにデニスがCEOに返り咲いた。そして1月16日に全従業員を集めてスピーチを行い、「チームを変革する。我々は再び勝利するんだ」とぶち上げた。ウィットマーシュはその場には姿を見せなかった。

 15年からのホンダ・エンジン搭載が決まっているマクラーレン。今年のような成績が続くようでは、ホンダに顔を向けられないと、80年代のマクラーレン・ホンダ時代を引っ張ったデニスが考えても不思議ではないだろう。そこに、ホンダをよく知るロス・ブラウンの加入があれば、マクラーレンが再びトップチームに返り咲くのは夢ではない。

ホンダの第一候補は伊沢か

 ただ、最後にひとつ注文を付けておきたい。ドライバー選びに慎重を期してほしいということだ。デニスの復帰で彼と犬猿の仲であるフェルナンド・アロンソの復帰が困難になってきたことを考えれば、本当に数少ないドライバーからの選択になる。くれぐれも慎重に。レースに勝てるかどうかはドライバーの腕次第というところもある。

 日本人ドライバーに関しては、ホンダが今年GP2(F1直下のカテゴリー)に参戦させ、将来のF1ドライバーとして育てるようだ。私が聞いた噂では伊沢拓也が第一候補となっているらしい。彼も今年で30歳。もし噂が本当なら、死ぬ気になって立ち向かわなければF1は少し難しいだろう。彼の奮起に期待しよう。

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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