“一貫性”欠く香川に向けられる懐疑の目=いまだ本領発揮できず、厳しい評価が続く

寺沢薫

プレミアではゴールもアシストもなし

プレミアではゴールもアシストもなし。いまだ本領発揮できず、徐々に懐疑の目が向けられるようになってきている 【Getty Images】

 しかし、肝心のイングランド国内ではどうしても結果が出ない。ここまで、プレミア8試合出場、うち先発6試合でまだゴールもアシストもゼロ。CLで好プレーを見せても、国内に戻るとインパクトを残せない。この浮き沈みが現地メディアから徐々に指摘されるようになったのが、冒頭に挙げた現在の辛口評価の始まりだった。

『マンチェスター・イブニング・ニュース』は、ルーニーとファン・ペルシーを欠くと攻撃力が大幅に低下するチームを批判し、香川についてこう言及した。
「ユナイテッドのファンは、ドルトムント時代の“魔法”について多くの話を聞かされている。しかし、今季はレアル・ソシエダ戦とレバークーゼン戦を除き、定期的にそれは見られないままだ」

 また、同紙は2−2で引き分けた12月1日のトッテナム戦後にこうも書いている。
「ユナイテッドの勝敗に関わらず、モイズはいつも、香川を外した後は記者の質問をうまくかわしている。だが、また矛盾したパフォーマンスを見せたことで、日本代表MFは監督から無視される理由の一端を示してしまった。ポジションを保つためには、定期的に最高のフォームを見せなければいけない」

 また、シーズン半分を終えた時点で『インデペンデント』が付けたレーティングでは、「ユナイテッドのファンは彼を見たくてたまらないが、ルーニーが好調でモイズは彼のスタメンを用意できるのか? 彼は今季、プレミアで得点もアシストもできていない」と寸評。10点満点の5点は、不振のチームで同じく真価を発揮できていないマルワヌ・フェライニやダニー・ウェルベック(5点)、アシュリー・ヤングやトム・クレヴァリー(4点)らとともに“及第点以下”の低評価だ。

残された時間はそう多くはない

 随所で垣間見せる高いクオリティーに疑いの余地はない。だが、“一貫性”が欠けている。これがイングランドでの今の“香川評”だ。『テレグラフ』のマーク・オグデン記者の言葉を借りると、今季序盤の香川は退屈で結果も出せないモイズのチームに怒りをぶつけるサポーターの「ちょっとしたポスターボーイ(広告塔)」だった。しかし、いざピッチに立つと「日本人MFは今季、彼を定期的に無視するモイズが間違っているのだと示すことがほとんどできていない」(テレグラフ)のが現状だ。ドルトムント時代の“魔法”を、マンチェスターのファンはまだ数回しか目撃していない。FAカップのスウォンジー戦ではルーニー、ファン・ペルシーのダブルエースを負傷で欠いたが、そういった試合でこそ香川にチームを助けてほしいというのがサポーターの本音だろう。

 1月の移籍市場オープンに合わせ、不振に苦しむユナイテッドには多くの補強のうわさが出ている。ゴシップ報道の信ぴょう性はさておき、移籍報道は選手やチームが客観的にどう見られているかという“鏡”でもある。「ユナイテッドにはクリエーティブなMFが必要」という意見や報道が多いが、これは中盤のメンバーが攻撃面で結果を出せていないという意味に他ならない。特に、ファーガソンが「クリエーティブ」なオプションとして白羽の矢を立てたはずの香川にとっては「期待に応えていない」と言われているようなもの。屈辱と言ってもいいだろう。

 2年目の香川に対しては、それだけファンや現地メディアが課すハードルが上がっている。ファーガソンは勇退に際し、「2年目のシンジはもっとやれる」と太鼓判を押した。イングランドの人々は名将の言葉を信じているが、徐々にその目は「期待」から「懐疑」に変わってきている。
 ファーガソンの目利きが正しかったことを証明するために、残された時間はそう多くはない。

<了>

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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