第2次黄金期を迎えつつある市立船橋=悲願の夏冬全国2冠に挑む高校選手権
残すは2年ぶり6度目の選手権制覇のみ!
夏冬2冠に挑む市立船橋高。その強さは第2次黄金期を迎えつつある 【平野貴也】
プレミアリーグチャンピオンシップを制した同県のライバル流通経済大学付属柏高(流経大柏)に今季3戦3勝という結果も見逃せない。そして、年間を通じたプリンスリーグ関東1部では、上位3チームに与えられるプレミアリーグ参入戦出場権を獲得し、見事に来季の昇格を決めた。目標のうち実現していないのは、これから始まる高校選手権の全国制覇のみ。順調そのものだ。
真っ向勝負に臨み、勝ち続ける姿勢を崩さない
朝岡監督は「きっと選手権予選でも勝ち上がっていけば流経大柏さんと当たる。手の内を見せたくない気持ちはあった。ここでは負けておいて、最後(の選手権)は勝つというシナリオを考えていた。でも、選手の顔を見て『そろそろ彼らの力を信じても良いのではないか』と思い直したし、真っ向勝負で何度も勝つことはできないのではないかと考えている弱気な自分自身がいけないと思った」と、当日になって急きょ主力メンバーを半数混ぜる形に先発を変更。試合途中からは主力を次々とピッチへ送り出し、逆転勝利を収めた。
この試合から、市立船橋は内容を重視しながらも、すべての試合を勝ち進む姿勢が固まった。高校総体決勝で流経大柏と再戦した際も強気な姿勢は崩さず、就任当初は消極的だったプレミアリーグ昇格についても、ハッキリと目標に定めて成し遂げた。リーグが佳境を迎え、強豪Jユースにマークされるようになっても「選手権が優先だから負けても経験になればいい」といったような言葉は聞かれず、「本気のJユースを相手に楽しむことができている」とプレッシャーを真っ向から受けて乗り越える場としてくぐり抜けてきた。
単に強いだけでなく、マークされる立場を自覚し、克服する気概があるからこそ、今大会の市立船橋は優勝候補筆頭にふさわしいチームと言える。
2人のJ内定選手を含むキープレーヤー
J内定が決まっているFW石田雅俊。パサーから、得点能力をも備えたプレーヤーへと変ぼうした 【平野貴也】
いつどんな形でゴールが生まれるか分からない、楽しさがある。一昨年は「堅守とセットプレー」のイメージが強かったが、今年は強力な攻撃力をどこかで披露してくるだろう。選手個々でも攻撃の軸となるFW石田雅俊、守備だけでなく主将としてチームの中心でもあるDF磐瀬剛という注目プレーヤーがいる(ともに京都サンガに加入内定)。
石田は、名古屋U−15に所属していた中学生時代はボランチだったが、高校に入ってストライカーへと変ぼうを遂げた。「教えられないセンスを持っている」と評価する朝岡監督が何度も個別に話す時間を設け、自覚や自信を持たせて潜在能力を開花させた選手だ。以前はゴール前でもラストパスを出すようなことがあったが、攻撃の軸としての自覚が備わり、得点意欲を向上させた。石田は2年次には「自分はパサー。憧れの選手は、中村俊輔(横浜FM)」と取材に答えていたが、3年次の終盤には「中村選手が憧れだけど、岡崎慎司(マインツ)選手も見習わないといけない。チームが勝つために個人で2点取ることを目標にしている」と話すようになった。
試合中のある場面で別の選択肢があったことを指摘しようと思った朝岡監督が「まずは、自分が行ったプレーの理由を聞いてみようと思ったら、逆サイドの選手の駆け引きなど、周囲の状況をほとんどすべて話し始めてビックリした。ピッチの中にいて、そこまで見えていたのかと思ったし、それで判断しているならもうOKとしか言いようがない」と思わず指摘を止めたほどの視野の広さは、ドリブル突破を仕掛けている最中に突然、トゥーキックやループシュートを放って決めるなど非凡な得点感覚として生かされている。
もう一人のキーマンである磐瀬は、高校サッカーファンにはすでに馴染みのある選手だろう。1年次にはサイドバックやボランチで出場して優勝に貢献。昨年は2年連続で日本高校選抜に選出された。今季はチーム事情からセンターバックに固定されたが、対人プレーの強さは比類がない。ほかに「1試合で2本は決定機を止めるように言われている」という2年生GK志村滉も年代別日本代表の経験者で注目選手だ。
今年の市立船橋は、選手を見ても、チームを見ても、歴史を見ても魅力がある。育成年代のアマチュア選手に過度な期待は禁物なのだが、期待を受けてそれに応えて前へ進もうという今季のチームならば、かつての黄金時代に匹敵する驚きや感動を生み出しても不思議ではない。「強い市船」の第2次黄金期がやって来ようとしているのかもしれない。
<了>
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