可夢偉ケータハム入り? の考察=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第19回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

一度は“蹴った”最下位チーム

 小林可夢偉のケータハム入りのうわさは、こうしたチームの活動資金不足という状況が後押しした。当初、ヘイキ・コバライネン、ポール・ディ・レスタ、シャルル・ピックらの名前がドライバー候補として挙がっており、小林の名前を聞くことはなかった。そもそも、13年のシートをケータハムに得たといわれていた小林だが、彼はその時には「ケータハムのような下位チームでは走りたくない」と、勝手に契約を結んできたといわれるマネージャーと別れている。自分の才能はもっと上位のチームで生きるはずだという自負があったのだろう。

 だが、チームへの持ち込み資金を得るために寄付金まで募ったのに、どこのチームからも声はかからなかった。それが1年経った今、大金を持ち込んで、一度自ら加入を拒絶した最下位チームとの契約を結びつつある。用意した持参金は約6億円といわれる。その中には、彼がF1復帰を望んで支援者から募った寄付金も含まれているのだろう。彼を支援して寄付したファンにとれば、加入するのが最下位チームであるとはいえ、そのお金がやっと正しい使途(というのもおかしな理由だが)で使用されると聞いて、ちょっと安心したのではないか。

不安が残るチーム体制

 しかし、ケータハムが選手権の上位にのし上がってくるにはハードルが相当高い。フェルナンデスの活動資金引き締め以外にも、優秀な人材の不足という現実的な理由もある。かつてマシンデザインを担当したマイク・ガスコインは今もケータハム・グループ内にいるが、F1チームからは離れている。F1で選手権上位を狙うにはガスコインのような優秀な人材が必要だが、現在のチーム代表アブテブールには、優秀な人材を集めるためのコネクションもなければ見る目もなさそうだ。小林のチームメイトは、これまで名前も知らなかったエリクソンだとか……。こうした環境を考えれば、小林はかなり苦労をすることになりそうだ。ただ、ケータハムの“ガチンコ・ライバル”であるマルシャのドライバーが、経験の少ない若手ばかりなら、レース巧者の小林が頑張れば選手権10位は行けそう。ケータハムにとればそれが最も重要な点だ。

 ただ小林可夢偉とケータハムは、まだ最終的な契約を結ぶまでには至っていないという。後は両者のサインだけだろうが、それがいつなされるのか私は知る由もない。小林はツイッターで、「しばらくしたら発表します」と呟いていたが、出し惜しみせずにさっさとサインしてパッと公表すればスッキリと新年を迎えることができるのにね。

<了>

『AUTOSPORTweb』

【AUTOSPORTweb】

F1やスーパーGTの最新情報をリアルタイムでお届けするモータースポーツ専門サイト

2/2ページ

著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント