ラグビーワールドカップ日本開催を成功させる鍵とは?

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

簡単ではないチャレンジだが、日本にはチャンス

日本大会開催はチャレンジでありチャンス。「必ず成功します」とキャロル氏は強い意思を語った 【スポーツナビ】

 ここからさらに村上氏はラグビーワールドカップの成功へ向けて、核心に迫っていく。これまでラグビーワールドカップはオーストラリアやニュージーランド、イングランド、南アフリカなどのラグビー伝統国と言われる地域で開催してきた。2019年はアジアで、そして伝統国以外で初めてのラグビーのビッグイベントの開催となる。
 キャロル氏は「今までの大会とは違う特別な大会となるでしょう。しかし、その分、これまでにない成功を収める大会になると信じています」と高らかに宣言。そのための鍵として、以下のように話した。
「第1にたくさんの人に会場に来てもらって、会場を満員にすること。第2に、海外から来た方々をボランティアを中心に『おもてなし』し、良い経験を積んで帰国してもらうこと。第3に、主に組織委員会から見てですが、収益をきちんとあげることも大事です。この3つをきちんとこなして、日本というマーケットの中で、ラグビーとしてのプロファイルが上がっていくこと、これが一番大事だと思います」

 前向きに話すキャロル氏だが、会場、そして司会を務める村上氏はどうも懐疑的。現在の日本において、ラグビーは「十何番の位置」(村上氏)。日本でのラグビーワールドカップ開催は、例えるなら「オーストラリアで野球の世界一決定戦『ワールド・ベースボール・クラシック』(WBC)を開催するようなもの」(同)。盛り上がりのイメージについて、さらに村上氏が質問をすると、キャロル氏は「決して簡単ではないチャレンジ」と認めつつも、「ラグビーワールドカップがあるということを利用して、これまでの取り組みや今後のプランをひとつにまとめあげ自ら恩恵を得ていく、日本にとってはまたとないチャンスでもあります」と訴えた。

 また、集まった聴衆に向かってこうも言った。
「ラグビーワールドカップやラグビーそのものを盛り上げていくことができる一番の人物は、ファンの皆さんです。皆さんが伝えていく、発信していくことが大事。ぜひ周りの人、友達にラグビーのこと、ラグビーワールドカップのことを話して、話して、話し続けてほしいです」

 最後までポジティブな意見を崩さなかったキャロル氏の姿勢に、村上氏から「元気を出して頑張っていきましょう」と会場への呼びかけがあり、第1幕は閉じた。

「東京五輪との連携も非常に重要」

キャロル氏は、観客からの鋭い質問に「答えが長くなってしまってごめんなさい」と笑いながら、真剣な眼差しで丁寧に答えていた 【スポーツナビ】

 休憩を挟んだ第2部では、キャロル氏がフォーラム参加者からの質問に答えた。以下は主な質疑応答。

――現在の組織委員会、日本協会の課題は何でしょうか?

 日本はイングランド(2015年大会の開催国)よりも長い準備期間があります。これまでにない時間の使い方ができ、一歩先の準備ができます。日本協会に関しては私のエリアではないので、言えることはないですが、組織委員会について言えば、長い準備期間が与えられた中、プランニングの時間が長くなるので、的確なサイズ規模感で動いていて、まだ華々しい決定がない状態です。これからさまざまな決定を下さなくてはならなくなりますが、それに合わせ、組織を進化させていかなければならないと思います。

――ラグビーワールドカップ2003で起きたトラブルで最も印象に残ったことはなんですか?

 やはりニュージーランドが退いてしまい、準備が18カ月しかなかったのが一番のトラブルでした。ただ、「18カ月しかない」という機運になったので、もしかしたら助かった部分もあったかもしれません。大きな規模の大会を開催するにあたって、常に最大の敵は時間です。
(それでは日本の6年間というのは長過ぎるのではないでしょうか?)ありすぎですね(笑)。

――東京五輪の開催が翌年の2020年となりました。東京五輪の組織委員会と連携するなどして盛り上げるということは考えていないのでしょうか?

 2つの組織委員会が連携することは、非常に重要だと私は思っています。ただ、ラグビーワールドカップは単一種目で全国各地に散りばめられる。一方で五輪はさまざまなスポーツが行われ、さまざまなタイプのスタジアムが必要ですが、会場は東京の1都市のみです。
 性質の異なる2つの大会ですが、それぞれの準備段階、活動、イベントというところで連携していくことが重要だと思います。例えば、チケット販売のタイミングやリハーサルイベントの部分で連携する必要があると思います。

――子どもたちはどのようにラグビーワールドカップに参加できますか?

 ラグビーワールドカップは人々にさまざまなチャンスを与えてくれるものだと思います。子どもたちで言うと、オーストラリアでは、日本で言う文部科学省と一緒になって、ラグビーワールドカップの2年前から、小学校のカリキュラムの中に参加しました。全部で20ある参加国を選んで、小学校で学びましょうという試みです。そして、同じ国を選んだ学校同士でコンテストを開いて、優勝した学校に参加国が訪ねるといった企画をしました。

「ファンの発信が成功させるうえで大事な力」

――サッカーとラグビーの連携はどうしていったらいいでしょうか?

 サッカーで言うと、Jリーグと連携を取っていくことが大事になると思います。ラグビーワールドカップという大きな国際的なスポーツイベントを成功させていくためには、そして盛り上げていくためには、そこにプライオリティを持ってもらえるように、仕向けていかなければならないです。例えば、Jリーグの日程を鑑みて、試合が重ならないようにするコーディネーションをすることが必要です。ただ、これはサッカーに限らず、野球などとも行っていかなければならないです。

――ラグビーの楽しさを伝えるのが難しいのですが、どうラグビー観戦の魅力、楽しさを伝えたらラグビーを好きになってくれると思いますか?

 決してこれは日本だけの問題ではなく、オーストラリアでも難しい問題です。決して簡単に理解できるスポーツではないと思いますが、まずは観てください、慣れてくださいと言うと良いと思います。ゲームを観てください、レフリーが試合を止めても気にしない。そして、良い試合をリラックスして観れば、必ず面白いからと、私だったら言うと思います。
 ラグビーほど、いろいろな運動能力がひとつのチームの中に求められて、さまざまな体型をした選手がいて、さまざまな性質のプレーがひとつになっているスポーツは他にないと思います。
 あと、もうひとつ伝えてほしいのは、「ラグビーワールドカップを観なかったら、本当に後悔をするよ、それくらい特別なビッグイベントなんだよ」ということです。

――最後にメッセージを。

 ラグビーが好きで情熱を持って応援してくれていると思いますが、それをぜひいろいろな人に伝えてほしい、発信していってほしいと思います。皆さんの発信が、日本でラグビーワールドカップを成功させるうえで大事な力になると思います。
 日本は良い会場がいっぱいありますし、移動手段も他国と比べても随分と良い、街も魅力的できちんとした宿泊施設、観光地として魅力的なものもある。なおかつ、スポーツ好きの方がたくさんいる、良い意味でお祭り好きで、みんなで集まることが好きな人がたくさんいる。そうした成功に必要な要素がすべて備わっているのが日本です。皆さん、ご心配なく、ラグビーワールドカップ2019は必ず成功すると思います。

マット・キャロル氏に聞く「ラグビーワールドカップはどんな存在?」

 私のキャリアにとってハイライトです。オーストラリアで2003年大会に携わったことで、名誉勲章もいただきました。また、今回新しいラグビーワールドカップに関わることができるのは他にない、特別な経験になり、前回以上のハイライトになると思います。自分にとって、ラグビーワールドカップは特別なこと、エンジョイできるものです。私のバックグラウンドは建設業界ですので、ビルを建設するように、1つ1つパーツを組み合わせていって、1つのものが出来上がること、しかもそれが最高峰のイベント。その過程を楽しめるものだと思います。また、そういった努力をやっていった結果、私が得られるのはそこに関わるチームやファンの方の笑顔を見たときに全部が報われるように気持ちになります。

<了>

協力:(公財)日本ラグビーフットボール協会

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