南米の2強が笑ったW杯組み合せ抽選会=前回王者スペインは厳しいグループに

ブラジル、アルゼンチンは与し易いGLに

現地時間6日に行われたW杯ブラジル大会組み合わせ抽選会。この結果で本大会も身近に迫ってきたと感じるだろう 【Getty Images】

 現地時間6日(以下同)に行われたワールドカップ(W杯)ブラジル大会の組み合わせ抽選会では、アルゼンチンとブラジルが望み通りの結果を得ることになった。すべてがセオリー通りに進めば、南米の2大国は7月13日にマラカナン(リオデジャネイロ)のピッチで対面することになるかもしれない。いずれも決勝までの道のりには障害はあるものの、彼らがグループリーグの組み合わせに恵まれたことは確かだ。

 ブラジルにとっての障害はクロアチア、メキシコ、カメルーンと同組に入ったグループリーグではなく、スペインかオランダ、運が良くてもチリと対戦することになる決勝トーナメント1回戦となる。

 一方、常に冷静沈着なアレハンドロ・サベーラ監督いわく「ある程度は楽観視できる結果」となったアルゼンチンのグループにはナイジェリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イランら与し易い相手がそろっただけでなく、試合会場もベースキャンプ地となるベロオリゾンテや涼しい南部の大都市リオデジャネイロ、ポルトアレグレが当たった。

 さらにアルゼンチンは首位でグループを通過した場合、決勝トーナメント1回戦もやはり南部のサンパウロで戦うことができる。その相手もスイス、エクアドル、フランス、ホンジュラスのいずれかであり、大きな問題にはならないだろう。障害となり得るのはより高温で乾燥した気候のブラジリアで行われる準々決勝で、ベルギーやロシア、ポルトガル、運が悪ければドイツと対戦する可能性がある。

死の組はDとG。日本はGLより決勝T初戦が課題

 南米の2大国に幸運の女神が微笑んだ一方、今回の抽選では2つの「死のグループ」が生まれた。1つはウルグアイ、イングランド、イタリアら優勝経験を持つ3つの大国がそろったD組だ。このグループの順位はそれぞれコスタリカ戦で何点差をつけるかで決まることになるかもしれない。

 もう1つはドイツ、ポルトガル、ガーナ、米国と高いポテンシャルを持つ4チームがそろったG組だ。本命はドイツだが、ポルトガルにはキャリア最高の時を過ごすクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリー)がいる。また2006年までドイツ代表で監督とアシスタントコーチの関係にあったユルゲン・クリンスマン監督とヨアキム・レーヴ監督が対戦する米国対ドイツは因縁深い一戦となるはずだ。

 C組に入った日本には決勝トーナメント進出の可能性が十分にある。本命は南米予選で好成績を残したコロンビアであり、コートジボワールも中心選手の活躍によっては躍進の可能性を秘めている。ギリシャも相変わらず堅固なブロックを保っているが、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本には大舞台での飛躍を期待できるだけの理由がある。とはいえ決勝トーナメント1回戦ではイタリア、イングランド、ウルグアイのいずれかと当たるだけに、準々決勝を目指すのは難しいと言わざるを得ない。

 ベルギー、アルジェリア、ロシア、韓国のH組はヨーロッパの2チームが実力的に抜けている。このグループは2強のどちらが首位通過するかに焦点が絞られそうだ。

グループリーグが決まり、いよいよW杯が身近に

前回覇者スペインのデル・ボスケ監督にとっては、グループリーグ最初の2戦は厳しい戦いとなる 【Getty Images】

 B組では2010年南アフリカ大会決勝で激戦を繰り広げたスペインとオランダが初戦からぶつかることになった。現在オランダは良い状態にあるだけに、これはスペインにとって悪いニュースだ。しかもこの試合はヨーロッパ勢が苦手とする高温多湿のサルバドールで行われる。さらにスペインはブラジルに大敗したコンフェデレーションズカップ決勝の舞台であるリオデジャネイロでの試合も直後に控えている。

 ヨハネスブルクの決勝で大苦戦を強いられたオランダと同じく――イケル・カシージャス(レアル・マドリー)がアリエン・ロッベン(バイエルン・ミュンヘン)との1対1で見せた驚異的なセーブを記憶している人は多いだろう――、前回大会のグループリーグでも同組となったチリもスペインにとって困難な相手となるだろう。ホルヘ・サンパオリ監督率いるチリは南米予選を通して上々の成績を収めただけでなく、最近は強豪国との親善試合でも良い結果を出している。

 勝利がグループリーグ突破の条件だった前回大会のチリ戦では、クラウディオ・ブラーボ(レアル・ソシエダ)が誤って飛び出したミスを生かし、ダビ・ビジャ(アトレティコ・マドリー)がガラ空きとなったゴールにスペインの先制点を流し込んだ。だが後にビセンテ・デル・ボスケ監督はグループリーグ敗退の危機にさらされていた選手たちが非常に神経質になっていたことを明かしている。

 はたして南米勢同士の決勝は実現するのか? もしくは何らかのサプライズが生じるのか?
 グループが決まり、各チームのスケジュールが決まった今、いよいよW杯が身近に迫ってきた。

<了>
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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