ニックス大不振、NYの騒々しさは続く!?=オーナーを苛立たせる無気力なゲーム

杉浦大介

「プレッシャーがなくて驚き。楽しくプレーできた」

昨季得点王のアンソニー(右)では、なかなかチームのまとまりを呼ぶことができない 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 実際に去年のニックスには、リーグ有数のポイントガードと呼ばれ、優勝経験もあるキッドを始めとする多くの重鎮たちがそろっていた。しかし、そのキッドは昨季限りで引退し、今季からブルックリン・ネッツのヘッドコーチに就任。ウォーレス、トーマスも退団し、“リーダー”と呼べる存在が不在になってしまった。

 残ったのは、これまで数々のトラブルにも巻き込まれてきたカーメロ・アンソニー、スミス、メッタ・ワールドピース、精神面の未成熟さが指摘されるアンドレア・バルニャー二といったクセの強いメンバーである。

 コート内外で司令塔の役割を果たしたキッドが去り、昨季前半戦では極めて流麗だったボールムーブメントが奇麗に消失。守備意識も低く、個々のタレントに頼った1オン1バスケットボールを延々と繰り広げ、そのまとまりのなさが惨敗の連続に繋がっている感がある。

「自分がボールを持ったとき、(ニックスの選手たちが)ほかのチームのようにプレッシャーをかけてこないことに驚いた。普段はあそこまで自由にシュートできないんだけどね。おかげで楽しくプレーできたよ」
 10日のニックス戦で6本の3点シュートを決めた後、スパーズのダニー・グリーンが残した談話がすべてを物語っているのだろう。

ウッドソンHCのメッセージは届かない……

 こうして舵取り役のベテランたちが不在となってしまった後で、ニックスの今後の展望も良好とは言えない。

 昨季得点王のアンソニーへの負担が大き過ぎるだけに(ここまで平均プレー時間40.0分はリーグ2位)、シーズン中に戦力補強したいところ。しかし、トレードの駒として価値があるのは3年目のイマン・シャンパートくらいで、一部で話題になったセルティックスのレイジョン・ロンド獲得も現実味は薄い。リーダーシップに秀でた選手を補充したくとも、キッドのような生粋のボスキャラはそう簡単に手に入るわけではない。

「(ホークスの方が)私たちよりハードにプレーしていたのだから、勝てるはずがない。こうなってしまっているのは私の責任だ。地元でこのような形で負け続ければ心配せざるを得ない」

 16日の試合後のそんな言葉を聴く限り、ウッドソンHCのメッセージはすでにチーム内で響かなくなっているのかもしれない。
 短気で移り気なドーラン・オーナーがこのまま黙っているとは考え難く、次はチアリーダーを降板させるだけでは済まないだろう。一般的に、指揮官交代以上のてこ入れはない。今後も地元での無気力なゲームが増えれば、ウッドソンHCの去就に少しずつ注目が集まっていくに違いない。

 いずれにしても、勝っても負けても常に騒がしいニックスの周囲では今後も波乱の日々が続きそうだ。頼りになる“キャプテン”不在の船が、約束の地に到達できるとは考え難い。そんな状況下で、2013−14年は長く厳しいシーズンになりそうな予感がすでに濃厚に漂っている。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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