ニックス大不振、NYの騒々しさは続く!?=オーナーを苛立たせる無気力なゲーム

杉浦大介

勝利予告の“第7戦”は勝ったものの……

不振にあえぐニックス。J.R.スミス(右)の出場停止などもあったが、本当の理由は…… 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

『“第7戦”以上に素晴らしい言葉はない』――。

 米スポーツ界にはそんな言い回しがあるが、それはもちろん3勝3敗後に行なわれるプレーオフ第7戦を指した文句である。シーズン開幕から“7戦目”が“絶対必勝のゲーム”などと呼ばれてしまうのは、ファンもメディアもせっかちな『ニューヨーク』に本拠を置くニックスくらいのものだろう。

 今季、開幕ダッシュに失敗したニックスは、地元で迎えた11月10日のサンアントニオ・スパーズ戦で31点差の屈辱的な大敗(89−120)。2勝4敗で迎えた続く13日のアトランタ・ホークス戦前、オーナーのジェームズ・ドーラン氏が「私たちは次の試合には勝つ。保証するよ」と大胆にも勝利予告を行って話題を呼んだのだった。

 その“7戦目”には何とか勝って危機を脱したかに思えたが、直後に地元で再び2連敗(14日、対ヒューストン・ロケッツ 106−109、16日、対ホークス 90−110)。ホークスとの再戦で惨敗を喫した時点で、今季は本拠地のマディソン・スクウェア・ガーデンで1勝5敗となってしまった。

 そのホークス戦途中には、地元ファンから早くも「(マイク・)ウッドソン・ヘッドコーチ(HC)をクビにしろ!」とコールが飛ぶ始末。通算でも3勝6敗でアトランティック地区の最下位タイ(※日本時間19日現在)に沈んでおり、その過程で逆上したドーラン氏は何とチアリーダーを休養させる“暴挙”に出て周囲を驚かせることにもなったのである。

不振の原因はベテラン勢の不在

 昨季は開幕6連勝、最初の9戦中で8勝を挙げて19年振りの地区優勝に向けて勢いを付けたのと比べれば、今季のここまでとは雲泥の差。オーナーをジリジリさせる不振の原因を考えていくと、さまざまな要素が浮かんでくる。

 昨季シックスマン賞を獲得したJ.R.スミスが薬物規定違反で開幕から5試合出場停止を告げられたこと。今季年俸2000万ドル(約20億円)以上を受け取るアマレ・スタウダマイヤーの体調が依然としてもうひとつなこと。そして、一昨年には最高守備選手に選出されたセンターのタイソン・チャンドラーが今季4戦目中に右足を骨折し、4〜6週間離脱となってしまったこと。

 守護神チャンドラーの不在が痛いことは間違いないのだろう。しかし、今季のチームのまとまりのなさを見る限り、問題はこれらの表面的な部分だけではないのかもしれない。
 常に自由奔放で正直なスミスが残したこんなコメントが、何よりも真実を指し示しているように思える。
「昨季のチームに属していたベテランがいなくなったのが痛い。ジェイソン・キッド、ラシード・ウォーレス、カート・トーマスはコミュニケーション能力に長けていて、おかげで今季とまったく違うチームだったからね」

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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