レベル低下も盛り上がるエールディビジ=オランダサッカーの明暗 第2回

中田徹

リーグのレベルダウンは代表にも影響

レベルダウンが懸念されるオランダリーグだが、本命不在で混戦となり注目を集めている 【VI-Images via Getty Images】

 前回(11月8日掲載「常勝アヤックスがやっとつかんだ初勝利」)、「オランダリーグのレベルダウンは深刻な問題だ」と記した。2013−14シーズンのオランダリーグ勢のヨーロッパリーグ係数は18位。これがたまたまなら良いのだが、12−13シーズンは20位だったのだから、やはり偶然の一言では片付けられないだろう。

 リーグとしてレベルダウンしているということは、「試合の質が下がっている」という声が出るのも当然である。オランダ代表のコーチを務めるパトリック・クライファートは「いくつかの試合のレベルはあまりに酷い。このことは、やがてオランダ代表にとって深刻な問題になる。オランダ代表の選手のうち大体40%がオランダリーグの選手なんだ」と答えている。

「最近は、糸を引くようなロングパスが正確に渡るシーンが少なくなった。昔は1試合に6〜7本あったのが、今は1本程度だ」という声もある。僕もこれには同意する。ボスマン判決(1995年)によってオランダリーグから多くのスターが去った時ですら、各チームにはロングパスの名手がいて、鋭いサイドチェンジのパス1本で逆サイドのウインガーをフリーにしていた。オランダサッカーにとっては、これはひとつの芸術だったのだが、“ロングパス=雑”という概念のせいか、こうした技術に磨きをかける選手が少なくなった。

選手からは海外移籍を勧める声

 選手の若年化も甚だしい。今季、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)プレーオフでミランと戦った時の、PSVの選手たちの平均年齢はわずか22歳強だった。昨季の平均年齢より実に5歳も若返っているのだ。PSVの選手だけあって、個々のポテンシャルは高く、開幕の頃は恐れを知らぬプレーでオランダのサッカーファンを魅了した。しかし徐々にプレイの質が安定しなくなり、オランダ・エールディビジではここ5試合、1勝1分け3敗という散々な結果に終わっている。

 アヤックスで5年過ごしてからレアル・マドリー(スペイン)、インテル(イタリア)、ガラタサライ(トルコ)とトップクラブを渡り歩いて来たウェズレイ・スナイデルは、エールディビジでプレーする若い選手に「いつまでもオランダに残ってはだめだ」と忠告する。

「僕のアヤックス時代はまだフィジカルが強く、経験も豊富な選手がいた。ヤン・ファン・ホルストは激しく来たから、僕も練習を全力で臨まないといけなかった。僕はこうして良くなっていった。例えばPSVのデパイなんて、代表からチームに戻ると18歳、19歳の選手と一緒に練習する。そうじゃなくて、やっぱり年長の選手とやらないと」と苦言を呈している。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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