アマNo.1投手、吉田一将のブレない強さ=高校の悔しさバネに身につけた“制球力”
投球フォーム改造で輝き始めた社会人時代
いまは野球をすることが「本当に楽しい」と語る吉田。高校時代にケガで投げられなかった分、投げられる喜びが染み渡った 【スポーツナビ】
気持ち良く投げられるフォームを手にした吉田は、水を得た魚のように輝き始めた。6月のJABA北海道大会で好投すると、堀井監督は主力として起用することを決断する。7月の都市対抗野球では初戦の当日朝まで、先発を戸田亮(現オリックス)にするか、吉田を抜てきするか迷ったが、新人右腕に託した。「戸田は試合が始まってみないと、コントロールを含めて分からない。でも、吉田は試合を壊さない」ことが理由だった。指揮官の期待に吉田は応え、チームを決勝まで導いた。
大学よりレベルの上がる社会人野球で、吉田はとにかく前向きに取り組んだ。過去にケガでつまずいた分、投げられる喜びが身に染み渡った。
「何不自由なく投げて、ある程度の結果も出て、というのが本当に楽しい。好きなことをやれている感覚があるので、自ずと練習しようと思います。大学までも練習はしてきましたけど、JR東日本に来てから結果が出ているので、さらにやろうと思いますね」
勝てる投手になるために――
「高校のときからアウトローのコントロールが必要なのは重々分かっているんですけど、そうかと言って投げられていたわけではなかったと思います。大学に入ってから、特にコントロールを意識するようになりました。社会人では、ピッチングをもっと細かく考えるようになりましたね」
例えば抜けたボールを投げた後は、どこを意識すれば修正できるかと試行錯誤を繰り返す。悪かった点が分からなければ、また同じ過ちを繰り返してしまうからだ。無意識で良いボールを放れたとしても、理由が分からなければ同じ球を投げられない。吉田は勝てるピッチャーになるため、使える引き出しを普段の練習から探していった。ブレないメンタルを持つ男はそうして技術を磨き、「高い安定感」と評されるまでになった。
揺るぎない武器を携え、プロの世界へ
吉田のプロでの目標は「少しでも長く現役生活を続けること」。いよいよ運命の日が近づいてきた 【スポーツナビ】
そして、運命の日まであと2日。スポットライトの下で思い出すのは、ケガに悩まされた日々だ。
「高校のときは、一番苦しい時期でした。でも、あきらめずに野球を続けて良かった。もしエースとして投げていたら、たぶん今の気持ちにはなってなかったでしょうね。負けた悔しさより、何もできなかった悔しさのほうが強かったので……」
来年迎える新天地での目標は、少しでも長く現役生活を続けることだという。
「今年は1年間ケガなくやって、ホントに投げる体力がついたと実感しています。ピッチャーとして投げる体力は、投げていかないとつきません。だからケガせず先発ローテーションを守って、1年でも長くやりたい。長い野球人生、現役生活にしたいですね」
高校時代にケガで悔しい思いをしたからこそ、乗り越えられた壁がある。そうして自分をコントロールし、ボールをコントロールできるようになった。
他者がマネできない方法で身につけた、ブレない制球力――吉田は揺るぎない武器を携え、プロの世界に挑戦する。
<了>