デニムアンドルビーに乗せる角居師の夢=秋華賞直前インタビュー

netkeiba.com

3歳時のウオッカを知る四位も「いいね!」

GI制覇へ向け、角居師は「万全の仕上げをして臨みたい」と意気込む。秋華賞は新たな挑戦の始まりとなる 【netkeiba.com】

 迎えた3戦目は、前走から1ハロン距離を延ばした阪神・芝2000メートル。ゲートは互角に出たものの、まったく行く気を見せずに1コーナーでは最後方。3コーナーあたりから徐々にポジションを上げると、直線では弾かれたように伸びて、2馬身差の圧勝を飾った。

「正直、あんなに切れる脚を使う馬だとは思っていませんでした。これは“化けたな”と思いましたね。さっきも言ったように、2戦目から3戦目の1カ月で体質もしっかりしてきたし、あとはこのレースで能力を出せるパターンを見つけたということだと思います」

 最後方追走から徐々にポジションを上げ、直線は外から猛然と追い込む……今につながる“デニムアンドルビーの競馬”は、確かにここから始まったと言っていい。次走に選ばれたのは、オークストライアルのフローラステークス(GII)。輸送を伴う中2週だったが、角居は将来性を占う意味でも、東上を決断した。

「オークスに、という気持ちももちろんありましたけど、それ以上に、将来的にオープンや重賞を使っていく上で、どの程度のレベルにあるのかを確かめるくらいの気持ちでしたね」

 ちなみに、フローラSの最終追い切りには四位洋文が騎乗。角居いわく「たまたま『乗ってみる?』ということになって」とのことだが、四位と言えば、3歳時のウオッカの主戦。果たして、その評価は……。

「クリスチャンの評価も相当高いものでしたが、四位君も『いいねぇー』って言ってました。やっぱり、クリスチャンが評価したあたりから、どんどん調子が上がっていったように思います」

 2頭のダービー馬の背中を知っている四位だけに、普段、若駒への評価は辛口だ。それだけに、四位が角居に伝えた『いいね!』は、表面的なそれとは違うと推測する。実際、レースで手綱を取ったのは内田博幸。彼を抜てきした決め手はなんだったのだろうか。

「未勝利を勝った時点で、『あの馬、走るね』って言ってくれて。それで、確か彼の方から、“乗りたい”という連絡をくれたように記憶していますけどね」

 百戦錬磨の内田なら、角居にとっても不足はない。実際、レースでは見事、この馬の武器である長くいい脚を引き出して、きっちりと勝利に導いた。未勝利を勝ったばかりの馬にして、いきなりの重賞一番人気。内田の腹の据わり方もあっぱれだが、それに応えてみせた馬もすごい。

「未勝利を勝ったばかりの馬が、道中で接触する場面もありながら、まさかあんな競馬ができるとは。やっぱり圧倒的な底力があるんだな、と思いましたね」

オーナーから「凱旋門賞の一次登録を」

 このフローラSを見届けた金子オーナーが、角居に言った。「とりあえず、凱旋門賞の一次登録を」。この言葉を受けて角居は、「うれしかったですね。僕も、できることなら……という思いはありました。オークスでいい競馬ができるようならということで、オーナーは本気でしたね」。

 オークスはフローラSから中3週。しかも、再度の東上が伴う。まだ完成途上の3歳牝馬ゆえ、トレーナーにとっても、ここはもっとも気を遣う調整だろう。

「見た目に疲れた感じはありませんでしたけど、目に見えない疲れが残っているのは一番嫌だし、怖いですからね。早く疲れを取ってあげることに重きを置きました。というのも、精神的なストレスなども、普段、表に出さない子なんですよ。本当におとなしくて」

 ウオッカやシーザリオなど、競馬史に名を残す名牝を育ててきた角居から見ても、デニムアンドルビーという牝馬は、「こういう子でもGIに近づけるんだな」と、考えを新たにするほど、いわゆる“走る牝馬”とは一線を画す存在だという。

「一頭として同じ馬はいませんが、そんな中でも走る牝馬というのは、内に秘めたきついところがあるんです。ウオッカにしてもシーザリオにしても、GIに向かう過程でピリピリし始めて、“これはしばらく近づかない方が良さそうだな”って思うことが度々ありましたからね。でも、そういう面を出してくるのが普通なんです。逆にデニムの場合は、レース直前でもニコニコしてニンジンを食べてくれそうな(笑)。そういう馬なので、余計に“目に見えない何か”には、気をつけてあげなければと思いますね」

 さて、オークスに話を戻そう。混戦とはいえ、桜花賞上位組を抑えて、一番人気に支持されたデニムアンドルビー。しかし結果は、勝ったメイショウマンボからコンマ5秒差の3着。坂を上ってからの脚には目を見張るものがあったが、勝負どころの反応が、もうひとつに映ったのも確かだ。

「女の子にとっては、そこに至るまでのローテーションがちょっとハードでしたからね。勝ち上がるタイミングが遅かったということで言えば、しくじったなっていう思いはありました。フローラSまでも、けっこう短い間隔で使っていましたから、強気な調教ができない状況でのGI挑戦は、やはり難しいものがあるなあとあらためて思いましたね。前走の疲れが取れるまでの猶予と飼い葉を食べさせる時間があって、そこから強い調教ができてこそ。やっぱりGIというのは、そうやって目指すものだと思いますから」

2/3ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント