意外にも冷静?米国での田中将大の報道 ひとつの理由はダルビッシュ

スポーツカルチャー研究所

「世界最高のスプリット」でも「ダルビッシュのレベルにはない」

Kスタでこの姿が見られるのも今年まで? 【写真は共同】

 野球専門誌『ベースボール・アメリカ』のベン・バドラー氏は、田中のピッチングについて「90マイル台前半(140キロ台後半)の速球に加え『世界最高のスプリット』を操る」と絶賛している。

 スプリット(日本でのフォーク)は、メジャーで活躍してきた歴代の日本人投手が誇る伝家の宝刀だ。野茂英雄、佐々木主浩をはじめ、今季大活躍した岩隈久志(シアトル・マリナーズ)、上原浩治(ボストン・レッドソックス)、そして黒田らは皆、スプリットを武器にメジャーの強打者たちを翻弄(ほんろう)してきた。

 また、先述の『MLBトレード・ルーマー』では、田中は今季9イニングあたりの与四球は1.3に過ぎず、昨年に至っては1.0と素晴らしいコントロールを有している点も言及している。しかし、先駆者である松坂大輔(ニューヨーク・メッツ)とダルビッシュ有(レンジャーズ)は渡米後に与四球が激増したことも同時に指摘している。

 スタッフ(持ち球)については、「ダルビッシュほどのレベルではない」とも評されている。渡米直前のダルビッシュは、9イニングあたりの奪三振数が11に迫る数字をたたき出していたが、田中の今季の奪三振率は7.8。ダルビッシュは今季もリーグワースト4位タイの80四球を与えるなどコントロールには未だ課題を残すが、それを補って余りある球質が圧倒的な成績を生んでいると見られているのだ。

意外と冷静な現地報道

 さて、このように米球界でも田中の名前は浸透しつつあるが、松坂やダルビッシュの渡米時と比較すると「浮ついた」報道が少ない印象を受ける。

 日本人選手バブルが真っ只中の2007年に移籍した松坂は「1億ドルの右腕」と全米で話題になり、またダルビッシュに至っては移籍の数年前から「DICEーK 2.0」「松坂を超える超逸材」などと騒がれた。松坂やダルビッシュ移籍時の現地報道の過熱ぶりに比べると、現時点で田中に関する報道は割と冷静な分析と評価に終始している。

 ひとつの理由は、ダルビッシュの存在だろう。今季これだけの成績を残した田中だが、それでも「ダルビッシュほどのレベルではない」と見られている。メジャー2年目のダルビッシュが今季見せたピッチングは、それだけの強烈なインパクトがあった。

 また、単純に日本球界からメジャーへ移籍する投手の前例が増え、ある程度成績が予測しやすくなったこともあるかもしれない。過去には失敗例もあるが、今年ダルビッシュ、岩隈、黒田、上原らが見せた活躍は、あらためて日本人投手のレベルの高さを米球界に示した。

 いずれにしても、もし今オフに田中のメジャー移籍が実現したら争奪戦は確実だが、それは良くも悪くも比較的地に足のついたものになりそうだ。

<了>

(スポーツカルチャー研究所 内野宗治)

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