「バルサの選手はサッカーを知っている」=日本と欧州の差を示す言葉の意味

大塚一樹

初日にバルセロナの選手たちが見せた衝撃的なプレーは、日本とは大きな差を感じさせるものだった 【写真/新井賢一】

 バルセロナ、リバプール、タイのチョンブリを迎えて行われたジュニアサッカーワールドチャレンジ2013以降「世界との差をどう埋めるか」の議論が、指導者、ジャーナリストの間で交わされている。子どもたちが“サッカーの基本”を形成する上で、とても重要な時期である12歳以下のカテゴリー。この年代での世界レベルでの問題意識を問う議論が巻き起こること自体が「ワールドチャレンジ」と銘打たれた本大会の真の企図とも言える。

 大会から2週間。この間、技術や戦術はもちろん、文化や教育に至るまでさまざまな側面から世界との差を考えるトピックが提示された。本稿ではピッチの中で起きたこと、あの衝撃を体感した人々の声に焦点を絞り、もう一度原点に立ち返って、日本と世界との差を見つめ直してみよう。

突きつけられた守備の課題

「ワールドチャレンジのハイライト」をあえて挙げるならば、初日のバルセロナのパフォーマンスというのが衆目の一致するところだろう。夏の終わりとは思えない暑さによる影響、連日の連戦による疲労、相手のパフォーマンスレベルに合わせる「セーブ感」がなかった初日は、得点差以上に「バルセロナと他」の差を感じさせるまさに“衝撃的”なプレーの連続だった。

 対戦した東京ヴェルディジュニア、セレッソ大阪U−12を特に苦しめたのが、恐ろしいほど速いボール保持者へのプレッシャーだった。ゴールキックからいつものようにつなごうとするセンターバックがなすすべもなくボールをかっさらわれて、絶体絶命のピンチ。国内では東京V、C大阪とも絶対に起こさないミスが、この日に限っては頻発していた。

「あの選手があの位置で奪われたのは見たことがない」。セレッソの大谷武文監督は、そのテクニックに絶大な信頼を寄せている教え子の、端から見れば凡ミスと言っていい「ありえないミス」を不思議そうに振り返った。選手本人も「特にバルセロナの選手は間合いが違った。距離感が分からなくなった」と、一気に距離を詰めてくるファーストディフェンダーのプレッシャーに驚きの顔を見せていた。

A代表にも共通する攻守の切り替えの遅さ

「止める」「蹴る」「運ぶ」。サッカーの基本技術に限ればバルセロナの選手にも見劣りしないはずの日本のJ下部組織の選手たちが、バルセロナの選手が上体のフェイントをひとつ入れただけでパスコースを消されて思考停止に陥る。瞬く間に身体を寄せられ、あっけなくボールを失う様は、間近で観ているものに軽いショックを与えるほどだった。

 バルセロナを率いるマルセル・サンス・ナバーロ監督は、大会2日目を終えた時点で日本とバルセロナの差について問われ、こんなコメントを残した。
「守備の技術、DFへの球際がヨーロッパのクラブに比べて緩い点が気になりました。距離を詰めるのに時間がかかるため、こちらが攻撃の準備をする余裕がありました」

 サンス監督の指摘した守備アプローチの問題点は、現在の日本代表が抱える守備の課題にも通じ、日本サッカーに突き付けられた大きな命題にも感じられる。

 大会のもうひとつのハイライトとなったバルセロナ対リバプールの決勝戦は、サンス監督の言葉を証明するかのように、クリーンで激しい、そして攻守の切り替えの速い“欧州レベルの”白熱した試合になった。欧州勢と日本の差はどこにあるのか? 実はこの短い大会の中で、日本の選手、指導者たちも、解決への糸口をつかみかけていた。

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著者プロフィール

スポーツライター。育成年代から欧州サッカーまで幅広く取材活動を行う。またサッカーに限らず、多種多様な分野の執筆、企画、編集にも携わっており、編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。

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