コンピューター制御のクルマは諸刃の剣=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第11回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

ドライビングの本質は変わらない

 コンピューター制御がドライバーの技量を阻害するかどうかは私には分からない。電子デバイスはいまやクルマの一部であることを考えれば、それをいかに自分のものにして運転技量を磨くかということも重要に違いない。レースにおける先陣争いは電子デバイスがあろうがなかろうが、その本質に変化があるとは思わない。ただ、そこに危険が潜んでいることを、ドライバーは知っていなければならない。

 ヨハンソンが説明してくれる。

「コンピューターはドライバーの動作よりはるかに短時間でクルマの挙動に反応する。クルマが異常な動きをしたら、それはたちまち修正される。しかし、修正の途中で縁石に乗り上げたりすることがあれば、今度はその動きに対応するためにさらなる修正がかかることがある。濡れた路面に足を取られたときにも、トラクションのかかり具合で動きが変わることがある。それが一瞬にして起こるので、ドライバーは対処できない。今年のル・マンでアラン・シモンセンのアストンマーチンが突然コースを外れてクラッシュした事故も、恐らくはそれが原因だったのではないかと思う」

F1、真の魅力と真の危険

 現代のモータースポーツにおいては、コンピューターが人間の能力をはるかに超えた働きをしていることに異を唱える人はいないだろう。しかし、安全のために採用したコンピューターが人間のコントロール能力を超えた結果、危険を引き起こすことになる可能性もゼロではない。

「そりゃあコンピューターがあった方が楽だよ。しかし、楽ではない運転の方が楽しいということもある。もちろん、昔に帰ることはできないけれど、技術者にはより慎重な開発を行ってもらいたい」

 ヨハンソンの言葉は重い意味を思っている。

<了>

『AUTOSPORT』

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著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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