錦織圭、トップ10に向けた厳しい戦い=真の強者へ 全米オープンは通過儀礼

内田暁

順当勝ちでフェデラーとの再戦も

錦織が順当に勝ち進めば、5月のマドリード・オープンで倒したフェデラー(右)との再戦の可能性もある 【写真:PanoramiC/アフロ】

 そのような視座から2013年全米オープン(8月26日開幕)のドローを見ると、今大会は錦織にとって“真のトッププレーヤーへの試金石”と言うべき組み合わせになっているのが、また興味深い。1回戦の相手は予選上がりなので未定だが、それ以降は順当にランキング上位者が勝つとすると、2回戦でバーナード・トミッチ(オーストラリア)、3回戦で第19シードのトミー・ロブレド(スペイン)と対戦。そこをも勝ち上がると、第7シードのロジャー・フェデラー(スイス)との顔合わせが濃厚だ。そしてこのトミッチ、ロブレド、フェデラーの3選手とは、いずれも直近の対戦で錦織が勝っている。つまりは相手が眼の色を変えて、錦織を倒しに向かってくる状況なのだ。

 現実的な話としては、この全米オープン後に錦織がトップ10入りする確率は、決して高いとは言えない。他の選手の動向次第ではあるが、仮にベスト8まで勝ち上がったとしても、10位に届くかどうかは微妙である。だが、そのような数字上の“誤差の範囲”に近い上下動など、本人は大して気には止めないだろう。

「一度入るだけでは意味がない。その地位にとどまれるだけの力を確立することが目標」
 ウィンブルドンの頃から、錦織はそのような言葉を何度も繰り返している。だからこそ、今回の全米オープンは錦織にとって、数字以上の大きな意味を持つはずだ。

“打倒錦織”に燃えているであろうライバルたちの包囲網を、果たして突破することができるか? ナダルが言うように、彼ら盤石の上位陣の一角を崩し、世代交代の騎手として名乗りを上げることができるのか? 待ち受けるのは、厳しい戦いであるのは間違いない。だが、次のステージへの扉を開くためには決して避けて通れない、真の強者への通過儀礼である。

<了>

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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