野口、福士らのメダル獲得の可能性は?=有森氏らが語る世界陸上女子マラソン展望

構成:スポーツナビ

「入賞を狙える精鋭」として選出された野口、木崎、福止。日本の“お家芸”マラソンでメダル獲得はなるか!? 【写真は共同】

 陸上の第14回世界選手権モスクワ大会が10日に開幕する。初日には大会最初の決勝種目として、注目の女子マラソン(日本時間19時号砲)が行われる。

 昨年のロンドン五輪では、入賞者ゼロ、最高位が木崎良子(ダイハツ)の16位という大惨敗を喫した日本女子マラソン。過去には2大会連続で五輪の金メダルを獲得するなど“お家芸”とされていたが、現在は世界との差が大きく開いてしまった感がある。今大会では復活を期すべく、参加可能出場枠である5枠を使わず、「入賞を狙える精鋭」3人が選ばれた。その精鋭とは、ロンドン五輪で日本人最高位となり、唯一国内選考会で2時間24分を切るタイムで優勝した木崎良子、2004年のアテネ五輪で金メダルを獲得し、2時間19分12秒の日本記録を持つ野口みずき(シスメックス)、“トラックの女王”として数多くの世界大会を経験し、今回初めてマラソンでの世界選手権代表を射止めた福士加代子(ワコール)だ。

 日本女子マラソンの“お家芸”復活はあるのか? スポーツナビでは、92年のバルセロナ五輪で銀メダル、96年のアトランタ五輪で銅メダルを獲得した元女子マラソン選手の有森裕子さん、NPO法人ニッポンランナーズ理事長であり陸上競技・駅伝解説者の金哲彦さん、筑波大学体育学専攻で体力学などの研究をしている榎本靖士准教授の3人に、日本人選手の特徴やレースの見どころなどを語ってもらった。

アフリカ勢の動きについていけるかがポイント(有森裕子)

 今回の世界選手権は日本人選手にとって、とても重要です。昨年の五輪のこともありますので、再び世界の舞台で戦うためにもリスタートの位置づけになります。一人一人が五輪の時よりも緊張感を持って、もう一度ここで頑張ってほしいと思っています。

 まず木崎選手に関しては、ハングリー精神が強く、前向きに進化を求める選手だと思います。走りがパワフルなところが特徴で、ロンドン五輪を経験してからは、さらに自信を深めているところが見られました。今と昔で走り自体が変わった感じはありませんが、どんなレースにも落ちついて対応でき、周りがどんなペースを作っても順応していけるようになった印象ですね。
 野口選手については周りが心配する必要がないぐらいの経験値があります。ただ、逆に10年ぶりの世界選手権にうれしさが抑えられない部分があるかもしれない。そこで焦って判断ミスが起こったら怖いと思いますが、自分がどういう状況に置かれているかを考え、今まで過ごしてきた時間をうまく生かせたら、実力は一番高いと思います。一番のお姉さん格として落ち着いたレース展開を期待したいですね。
 福士選手は、今までのマラソンでは、周りや自分が期待した通りの成功を得ていない状態だと思います。でも彼女には焦らないでほしい。焦らず、今持っている自分の走りをレースで出し、経験を積み上げることでさらに力をつけてほしいです。今回の世界選手権での経験は、今後にも必ずつながると思います。まずは成功事例を積み重ねることを意識してほしいです。

 今回は真夏のレースとなりますが、日本よりも涼しいロシアということを考えると、最初から良いペースでレースが展開されると思います。特に今回もロンドン五輪のような周回コースですので、ペースをつかみやすいということもあり、後半にペースが上がるのではないかと思います。アフリカ勢の選手がどう動くか、そこについていけるかがポイントですね。もし五輪と同じような展開になると最初から分かっているのであれば、野口選手あたりならついて行けるのではないかなと思います。福士選手の場合は、自分で最初からペースを作れたら、順応できるかも知れません。

 皆が望むことは、とにかく今大会で結果を出すこと。何より走る本人たちが、五輪惨敗の経験を受け、歯を食いしばってでも、今後世界と戦うために自分の目標を達成してほしいと思います。

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