吉井理人が語る、パVの行方と斎藤佑樹「佑ちゃんも僕もちょっと甘かった…」

構成:スポーツナビ

斎藤佑の復帰、手術も選択の一つだが…

1軍復帰に向けて2軍でリハビリを続ける斎藤佑。吉井氏はじっくり時間をかけて故障を直す必要性を説く 【写真は共同】

――昨年までコーチをしていた日本ハムの状態をどう見ていますか?

「選手はそろっていると思います。野手では糸井をトレードに出して、うまく外野のポジションを空けたことで若手が頑張っている。また、育つべき人、中田翔や陽岱鋼の成長も著しい。あのトレードはうまくいったんじゃないかと思います。
 ただ、ピッチャーの方ですよね。そこで去年よりもつまずいているのかなと思っています。一昨年、ダルビッシュが抜けて絶対的なエースがいなくなったが、吉川と武田勝が頑張ってくれた。でも今年はその二人の調子が上がらない。『エースは誰?』『連敗を止めるのは誰よ?』って聞かれたら出てこないです。絶対的な4番がいるんですが、投手陣の方がちゃんとした軸ができてない。だからローテーションもコロコロ変わる。そこがポイントかなって思いますね。そのおかげでブルペン陣にもすごく負担がかかってきている。増井、矢貫がちょっと調子を落としてますよね」

――ピッチャーで言うと、2軍で苦しんでいる斎藤佑樹投手がいます。現在の斎藤投手の状態をどうご覧になっていますか?

「右肩関節唇の故障からの復帰はケッペルと同じ。ケッペルは手術から丸1年かかって復帰したので、今の状態でどうこうの言うのは時期尚早だと思います。でも、佑ちゃんが試合で投げられるところまで回復してきているというのは、この先、希望が持てると思いますよ」

――昨年、指導されていて、けがの予兆みたいなものは感じられましたか?

「全く感じなかったです。佑ちゃんの一番良いところは身体が強く、回復が早いこと。プロ野球選手でもそういう選手は少ない。僕は佑ちゃんの武器だと思っている。プロで身体が強くって回復力が早いっていうのはすごい武器なんですよ。それを佑ちゃんは持っていたので、全く肩がどうのって気づかなかったですね。それで僕が油断してたってのもあるかもしれないですが……。この子は故障に関しては大丈夫だって思っていました」

――復帰を目指す斎藤投手に、吉井さんだったらどう接しますか?

「まずは故障を治すところからだから、故障を治してコンディションを故障する前よりアップしていかないといけません。これは時間がかかると思うんですよ。だから、早く復帰したいという気持ちを抑えられる雰囲気をつくってあげたいと思います。

 2軍での復帰の仕方も計画的にやった方が良いと思うんですよ。今見ている感じでは日本ハムのトレーナー陣はうまく計画しているように見えますが……」

――焦らずに復帰を目指すという意味では手術も一つ選択肢として持った方がいいでしょうか?

「これは難しい選択です。僕も選手の時は手術するのが嫌だった。僕は8年目のときに肘がものすごく痛くって検査したらトミー・ジョン手術を勧められました。しかし、当時、日本での成功例は村田兆治さん一人しかいなかった。しかも兆治さんが復帰するのに2〜3年かかった。それを見ると勇気が出なかった。それで痛みが取れて、ちゃんと投げられるようになるのに3年かかった。ですから、どっちを選ぶってのは本当に言いづらいです。

 アメリカに行って、手術を受けたのですが、その時は『こんなんだったら早く手術受けたら良かった』って思うくらいすっきりしました。そう思うと、手術した方が早いような気もしますが。手術なしで現役終わる選手っていうのは稀(まれ)だと思います。どこかで踏ん切りをつけるか、ここの判断は難しいですね」

――痛みのない投げ方を模索しているようだが?

「肩に痛みの出ない投げ方で、元の佑ちゃんの特長を出せるかどうかの問題もあります。ただ、佑ちゃんは頭の良い子なので、納得してやっているなら、それでいいんじゃないですかね。これは本当にどちらが正解か分からないです」

プロ野球選手は身体が強いのが一番の武器

――斎藤投手が2軍で苦しんでいる一方、田中将大投手は無傷の15連勝。斎藤投手は田中投手を意識して焦ることはありますか?

「それはあると思います。本人は言わなかったけど、昨年の試合でマー君とマッチアップした時の頑張り方はすごかった。やはりかなり意識しているなと感じました。負けたくないという気持ちはもちろんあると思いますよ」

――現在の差はどこが要因だと思いますか?

「ビシッと言ってしまえば、故障をしたか、しなかったですよね。プロ野球選手は身体が強いのが一番の武器。マー君はケガをしないですから」

――プロ野球、大リーグで成功を収めているイチロー選手もケガが少ないですね。

「イチローは安定した成績を収めるために、ケガをしないような取り組みをたくさんしています。ケガをしないで安定した成績を収めた方がプロだと思います。そういう意味で、マー君はそれに取り組んでいると思います。

 佑ちゃんは結果的に故障してしまったのは僕らのせいでもあるんですけど、そういうコンディションのケアという部分で、佑ちゃんはまだプロになりきれていなかった部分があったのかなと今では思います。野球は故障がつきものなので、何とも言えないですけど、ちょっと甘かったかなって……。僕らスタッフ含めて。

 僕が佑ちゃんを評価するところは、その身体の強さと、バッターに向かっていく強い気持ちを持ったピッチャーという部分だったんです。しかし、そう思っていたからこそ、僕の中でちょっとした油断があり、結果的にケガにつながったかもしれないですね」

昨年まで現場でやっていた経験を出したい

――最後に、吉井さんは今年が解説者1年目ですが、どういった解説でファンの皆さんに楽しんでもらいたいと考えていますか?

「解説者ルーキーなので、手さぐり状態です。ただ、本当に野球が楽しくなるようなことを言いたいと思ってやっています。FOX SPORTSの『BASEBALL CENTER プレゲームショー/ポストゲームショー』を見てくれている人は本当にコアな野球ファンだと思うので、より専門的なことも解説していきたいなと考えています」

――現場の経験、日米の違いなど、多くの経験をしている吉井さんだからこそのお話期待しています。

「そうですね。去年までコーチとしてベンチにいたので、その立場を経験したからこそ、伝えられることがたぶんあると思います。楽天やロッテの印象も相手チームから見たら弱くないと思っていましたし、そういうことはたぶん外からでは分からないと思います。そういったことをもっと番組でどんどん言っていきたいと思います。また、ファンの人が『へぇ〜』と思うような、例えばこの選手はウエイトトレーニングが好きで、朝一番に来てガッツリやっていますよとか、そういう情報も出していきたいと思います」

<了>

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