3冠王者バイエルンとの差をいかに埋めるのか?=ドルトムント、シャルケ、レバークーゼンの場合

今季のスーパーカップを制したドルトムントは、打倒バイエルンの一番手か? 【Getty Images】

 7月27日に行われたスーパーカップの後、ブンデスリーガは再び希望を取り戻した。昨季のバイエルンは記録を次々と塗り替え続け、クラブ史上初の3冠を達成。2位のドルトムントには25ポイントもの差をつけており、4位のシャルケに至っては36ポイントの彼方に離れている。それでもバイエルンはハングリーさを失ってはいない。むしろその逆だ。世界で一番人気の監督、ペップ・グアルディオラを迎え入れ、さらに中盤にはマリオ・ゲッツェ、チアゴ・アルカンタラというワールドクラスのスター選手を2名も加えたからだ。

 とはいえ、強大なるバイエルンは無敵というわけではない。ユルゲン・クロップ監督率いるドルトムントは、スーパーカップでバイエルンに4−2と勝利することで、それを証明した。この夏、ドルトムントとシャルケ、そしてレバークーゼンといった挑戦者は、どのような対応を見せるのか。移籍市場での動きをチェックしてみよう。

新戦力獲得に5000万ユーロを投じたドルトムント

 空は、黄色と黒の紙吹雪に占められている。その中で、ドルトムントの選手たちはトロフィーを高く掲げた。ささやかなリベンジには成功したが、さりとてドルトムントの凱歌(がいか)がいつまでも止まぬわけではない。3カ月前に喫したチャンピオンズリーグ(CL)決勝敗戦の痛手はあまりに大きく、今も彼らはその傷を癒せずにいる。昨季のバイエルンの勢力はあまりに強大であった。今季も彼らはその脅威をちらつかせており、国内のスーパーカップなど、あまりにちっぽけな傷でしかない。

 だが、ドイツ国内での今季初タイトルは、ブンデスリーガ全体に広がる1つのヒントを残した。見よ! バイエルンにはいまだに隙があるのだ。希望が広がり、高揚感が生まれる。3冠王者が、今季もブンデスリーガとヨーロッパを席巻すると予想した専門家は、決して少なくなかった。しかし、準備段階でドルトムントに受けた黒星は、バイエルンにとってはあくまで、初めての小さなつまづきでしかない。ドルトムントのクロップ監督も、この勝利を別物と考えなければならないことを理解している。だからこそ指揮官は「自分たちにどんな選択肢があるかは分かっている。バイエルンの選択肢のことも分かっている」と語った。そして、こう続ける。「われわれの対戦相手は、他の16のチームだ」。

 そうした戦いのために、ドルトムントは新戦力獲得に5000万ユーロ(約65億円)を投じた。優勝候補最右翼のバイエルンと、200万ユーロ(約3億6000万円)しか違わない大金だ。サンテティエンヌからやって来たピエル=エメリク・オバムヤンは非常に速く、攻撃に戦術的なバリエーションをもたらす。スパイダーマンのマスクを使ったゴール後のパフォーマンスで知られるこのエキセントリックなFWは、すでにドルトムントのプレースタイルに合致することを確信し、クオリティーという点でも王者バイエルンと大差はないと信じている。DFのソクラテス・パパスタソプロスは、ライバルのシャルケへ移籍したフェリペ・サンターナの代役としてブレーメンからやって来た。マッツ・フンメルスとネベン・スボティッチのCBコンビに続く序列になると自覚していることだろう。ブンデスリーガを理解しており、他の選手と違って適応に時間は必要ない。

 ドルトムントが先発候補としてシャフタール・ドネツクから獲得したのが、ヘンリク・ムヒタリアンである。ゲッツェの穴を埋めるため、クラブはタフな交渉を乗り越えた。ムヒタリアンは技術と知性、そしてスピードで、ファンとジャーナリストを魅了する。「アルメニアのジダン」として知られる、謙虚な24歳。ドルトムントでゲッツェのことを忘れさせられたなら、彼にとって非常に光栄なことだろう。忘れられていないかつての友、香川真司復帰のうわさも一部で流れた。確かにクロップ監督は彼とコンタクトを取りはしたが、香川は少なくともこの冬まではチームでのチャンスを探るべく、マンチェスター・ユナイテッドに残るようだ。

 さすがに香川は無理だとしても、スパイダーマンとジダン、それに古代ギリシャの哲学者と同じ名を戴くギリシャ人が、予想されるバイエルンの優位性を危険にさらすかどうかは、今後の成り行きを見るしかない。それよりもドルトムントにとって大切なことは(ゲッツェはそうならなかったものの)、チームの核を残留させることだ。ドルトムントの特徴である激しい動きと攻撃的なプレス、そしてギアを上げての魅惑的なサッカーは、新シーズンも変わらないだろう。

 ムヒタリアンとルカシュ・ファビアンスキの小さな負傷を除けば、ほとんどすべては計画通りに進んでいる。心配の種は、ロベルト・レバンドフスキだけだ。ドルトムントの開幕への準備には、ちょっとした夏のドラマがつきまとい(編注:バイエルンへの移籍話のこと)、もしかしたらドラマは年間を通じて続くかもしれない。針小棒大(しんしょうぼうだい)に話は広がり、新しいコメントと会見、さらに声明がこの物語を味付けしていく。クロップは最近「ここはフットボールクラブであり、議論のための社交場じゃない」として、この問題の棚上げを願っている。ただし移籍市場が閉まるまで、この話題が続くことは間違いない。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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