人知れず獲得したろう者五輪の銀メダル=音がない世界のバレーの難しさ
手話を覚えた時期も、五輪への思いもさまざま
ウクライナにストレートで敗れはしたが、選手たちは全てを出し切った悔いのない様子だった 【中村和彦】
日本代表は3大会連続メダルを獲得しており、ブルガリア大会で01年大会以来の金メダルを狙う。監督は北京五輪への出場経験を持つ狩野美雪氏。亡き今井起之前監督の意思を引き継ぎチームを率いることになった。選手との橋渡しには手話通訳がついた。代表のメンバーはチャレンジリーグでのプレー経験を持つ山崎望から、さほど経験値のない選手までさまざまだ。紆余(うよ)曲折がありながらも今年の春に代表の12人が選ばれた。5月の合宿の時点で狩野監督は、自身をはじめとする五輪出場選手の五輪への思いと、代表に選ばれた選手たちのデフリンピックへの思いの差を痛切に感じていたが、大会が近づくにつれ選手たちの意識も飛躍的に向上した。また選手たちは、監督、コーチ、臨時コーチ、サポートスタッフなどの指導を受け、技術的にも驚くほどの進歩を遂げた。見る能力の高い選手たちが、一流のお手本を見て、真似て、自分のものにしていったのだ。
持てる力をすべて出しきった
「ただひたすら勝つために、チームが勝つために、自分が何ができるか。それだけを考えてほしい」
狩野監督が国内合宿で常々語られていた言葉が、その言葉がまさしく実践された試合となった。
決勝の相手は2大会連続金メダルのウクライナ。日本は地力に勝るウクライナに0−3と破れ金メダルを獲得することはできなかったが、10日間で8試合の強行日程で持てる力をすべて出しきり、悔いのない“銀メダル”を獲得した。
誇るべき銀メダリストたちの名は、柳川奈美子、菅谷美穂、宇賀耶早紀、安積梨絵、安積千夏、河尻奈美、長澤みゆき、高良美樹、藤井美緒、藤裕子、三浦早苗、山崎望の12名。
大会名称が変更されて以降、4大会連続のメダルを獲得したデフバレー女子日本代表。彼女たちの歩みは着実に日本のスポーツ史に歴史を刻んでいる。
<了>