桐光・松井の敗因「省エネ」求め陥った罠=前田幸長が解説
桐光・松井が陥った罠とは……前田幸長氏が敗因を分析 【写真は共同】
試合は初回に桐光が幸先よく1点を先制するも、その後追加点を奪えず、4回裏に松井が横浜の4番・高浜祐仁に同点ソロを被弾。7回表に桐光の1番・大嶋優太のソロで勝ち越すも、その裏に横浜の2番・浅間大基に逆転2ランを浴び、これが決勝点。松井は2本のホームランに沈んだ。
スポーツナビでは、福岡第一高3年春のセンバツでチームを14年ぶりに甲子園に導くと、続く夏の甲子園で準優勝の成績を残した前田幸長氏に特別解説をしてもらった。松井と同じく、高校球界を席巻した左腕の前田氏は、横浜高との準々決勝をどう見たのか。
物足りない内容、力でねじ伏せる投球見たかった
逆転された場面(7回裏)は、味方の守備の乱れ(フライをファーストとセカンドがお見合いしヒットにする)からでした。普通の高校生なら動揺する場面です。しかし、特に昨夏の松井くんなら、そういった場面こそ、心を乱さず、「三振を取ってカバーしてやろう」という気持ちがピッチングに表れていました。今日もそうだったと思いますが、三振を奪えず、痛打を浴びました。
横浜高も右バッターなら内角の、左バッターなら外角のスライダーに対し準備ができていたように見えましたが、彼の本来のスライダーなら対策を講じても振らせてしまう力があると思います。三振10個で意地は見せましたが、ここぞの場面で空振りを奪えず、ファウルで粘られる場面も多かったのを思うと本調子ではなかったのかな、と推測されますね。
私も高校3年の甲子園のときは、調子がいまいち上がらず苦しいピッチングでした。それでも力でねじ伏せるピッチングを目指して甲子園に行き、準優勝までいきました。今日の松井くんには力でねじ伏せるピッチングが見られなかったのは非常に残念でした。何か物足りない感覚を、見ている人は感じたのではないでしょうか。
横浜高の4番・高浜くんとの勝負が顕著だったのですが、力でねじ伏せなくてはいけないバッターに初球・チェンジアップを使った(4回のホームランの場面)。技術的な部分で抑えにかかっていたように思います。今夏の前、チェンジアップを覚えたとか、今大会中も「省エネ投球」とか言われていましたが、本来ならストレートとスライダーで抑えられる力がある投手です。チェンジアップを覚え、投球の幅を広げたと思ったのでしょうけど、半速球はコントロールを間違うと非常に危険なボール。実は打たれる隙を作ってしまったように思います。
8回の3者連続三振の時の投球を常時見せられたら、結果は違ったかもしれません。