遠藤の不調で再び懸念される後継者問題=ブラジル戦で露呈した厳しい現実
チームの浮沈を左右する「鉄板ボランチ」の動向
今のザックジャパンにとって、遠藤と長谷部の「鉄板ボランチ」の動向がチームの浮沈を左右すると言っても過言ではない。2011年のアジアカップ(カタール)優勝以降、本田、香川、岡崎慎司ら前線のアタッカー陣は負傷でたびたびチームを離れたが、岡田ジャパン時代の08年からコンビを組み、10年南アフリカW杯ベスト16入りの原動力となった2人が離脱したことは一度もなかった。それがザック監督の大きな助けになったのは言うまでもない。
とりわけ、30代に差しかかった遠藤については「後継者不在」が以前から取りざたされてきた。高橋秀人がその有力候補ではあるが、めどが立ったとはいえず、遠藤に何かあったらチームが機能しなくなる可能性もゼロではなかった。その重大なテーマに2年半もの間、切り込まずに済んだ指揮官は、非常に幸運だったと言っていい。
それほど絶対的な存在であるダブルボランチが、期待通りの働きをしてくれなければ、チーム全体のパフォーマンスも低下するのも当然のなりゆきだ。鉄板ボランチから攻めの起点となる有効なパスが出ないと、ゴールに直結するような崩しは見せられない。ブラジル戦では2人のところでノッキングを起こすことがあまりにも多過ぎた。ボールポゼッション率がわずか37%にとどまったことも、その厳しい現実を象徴している。
ピルロと初めての対峙
「バイタルエリアを使いながら攻撃ができれば選択肢も広くなる。そのへんを意識しながら僕らがうまくゲームを作れれば一番いい。サイドバックも上がってきて厚みのある攻撃をもっと増やさないと相手も崩れない。狙った通りに崩れないときには、しっかりとボールをキープしながら相手に揺さぶりをかけるようなこともしていかないといけないと思います」と彼は今、自分のやるべき仕事をクリアにしようとしている。
世界最速でブラジルW杯出場権を獲得した後、本田や長友らが「ここから1年間は個の力をどれだけ上げられるかだ」と強調している通り、遠藤も個人としてのレベルアップが必要不可欠である。「前回のW杯でもそのことは強く感じた」と本人も強く認識しているようだ。
とはいえ、彼が日々プレーする舞台はJ2という下部リーグ。FC東京時代にJ2から代表へ参戦した今野はギャップを埋める方法を多少なりとも理解しているはずだが、遠藤の場合はまだつかみかねている部分があるだろう。クラブでプレーするときも「世界基準」を常に意識し続けるためにも、今回のコンフェデ杯のようなしびれる経験を全身に刷り込んでおくことが肝要だ。
イタリア戦では、同じ79年組で似たタイプの選手であるアンドレア・ピルロと同じピッチで初めて対峙するという大きな楽しみもある。16日のメキシコ戦でイタリア代表100試合目を記録したピルロは直接FKで一足先にゴールを奪っている。他の選手のことは気にせず日ごろから自然体を貫いている遠藤としても、彼の活躍ぶりには自然と目がいくはずだ。
世界トップを走り続けてきた「同級生」から、日本のレジスタ(中盤の底でゲームを組み立てる選手)は何を感じ取るのか。新たな自分を構築するきっかけをつかむことができるのか。そこにも注目しつつ、遠藤の完全復活を待ちたい。
<了>