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遠藤の不調で再び懸念される後継者問題
ブラジル戦で露呈した厳しい現実

チームの浮沈を左右する「鉄板ボランチ」の動向

ボランチの出来がチームの浮沈を左右すると言っても過言ではない。その意味でも遠藤(右)の復活が待たれるところだ
ボランチの出来がチームの浮沈を左右すると言っても過言ではない。その意味でも遠藤(右)の復活が待たれるところだ【Getty Images】

 0−3の完敗から一夜明けた16日。遠藤はザック監督と話し合いを持ったという。「昨日はまずボールをキープできなかったし、パスもスムーズに回らなかった。その反省を踏まえてポジショニングの修正点などを確認しました。ブラジル戦では何もできなかったし、ボールを持っている時間の判断を速くしないといけない」と彼はあらためて気持ちを切り替えた。


 今のザックジャパンにとって、遠藤と長谷部の「鉄板ボランチ」の動向がチームの浮沈を左右すると言っても過言ではない。2011年のアジアカップ(カタール)優勝以降、本田、香川、岡崎慎司ら前線のアタッカー陣は負傷でたびたびチームを離れたが、岡田ジャパン時代の08年からコンビを組み、10年南アフリカW杯ベスト16入りの原動力となった2人が離脱したことは一度もなかった。それがザック監督の大きな助けになったのは言うまでもない。


 とりわけ、30代に差しかかった遠藤については「後継者不在」が以前から取りざたされてきた。高橋秀人がその有力候補ではあるが、めどが立ったとはいえず、遠藤に何かあったらチームが機能しなくなる可能性もゼロではなかった。その重大なテーマに2年半もの間、切り込まずに済んだ指揮官は、非常に幸運だったと言っていい。


 それほど絶対的な存在であるダブルボランチが、期待通りの働きをしてくれなければ、チーム全体のパフォーマンスも低下するのも当然のなりゆきだ。鉄板ボランチから攻めの起点となる有効なパスが出ないと、ゴールに直結するような崩しは見せられない。ブラジル戦では2人のところでノッキングを起こすことがあまりにも多過ぎた。ボールポゼッション率がわずか37%にとどまったことも、その厳しい現実を象徴している。

ピルロと初めての対峙

 19日にレシフェで対峙(たいじ)するイタリア代表も、22日にベロ・オリゾンテで戦うメキシコ代表も、ブラジルに匹敵するほどの鋭いプレッシングを前面に押し出してくるだろう。球際の激しさや寄せの厳しさもアジアレベルとは比較にならない。ブラジル戦で直面した課題をイタリア、メキシコとのゲームでどう軌道修正していくか……。同じ轍は絶対に踏めないだけに、遠藤は長年積み重ねてきた英知を結集させてゲームに臨まなければならない。


「バイタルエリアを使いながら攻撃ができれば選択肢も広くなる。そのへんを意識しながら僕らがうまくゲームを作れれば一番いい。サイドバックも上がってきて厚みのある攻撃をもっと増やさないと相手も崩れない。狙った通りに崩れないときには、しっかりとボールをキープしながら相手に揺さぶりをかけるようなこともしていかないといけないと思います」と彼は今、自分のやるべき仕事をクリアにしようとしている。


 世界最速でブラジルW杯出場権を獲得した後、本田や長友らが「ここから1年間は個の力をどれだけ上げられるかだ」と強調している通り、遠藤も個人としてのレベルアップが必要不可欠である。「前回のW杯でもそのことは強く感じた」と本人も強く認識しているようだ。


 とはいえ、彼が日々プレーする舞台はJ2という下部リーグ。FC東京時代にJ2から代表へ参戦した今野はギャップを埋める方法を多少なりとも理解しているはずだが、遠藤の場合はまだつかみかねている部分があるだろう。クラブでプレーするときも「世界基準」を常に意識し続けるためにも、今回のコンフェデ杯のようなしびれる経験を全身に刷り込んでおくことが肝要だ。


 イタリア戦では、同じ79年組で似たタイプの選手であるアンドレア・ピルロと同じピッチで初めて対峙するという大きな楽しみもある。16日のメキシコ戦でイタリア代表100試合目を記録したピルロは直接FKで一足先にゴールを奪っている。他の選手のことは気にせず日ごろから自然体を貫いている遠藤としても、彼の活躍ぶりには自然と目がいくはずだ。


 世界トップを走り続けてきた「同級生」から、日本のレジスタ(中盤の底でゲームを組み立てる選手)は何を感じ取るのか。新たな自分を構築するきっかけをつかむことができるのか。そこにも注目しつつ、遠藤の完全復活を待ちたい。


<了>

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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