365日後へ、新たな冒険に出る日本代表=イラク戦はアジアから世界への境界線
アピール不足だったバックアッパーの選手たち
ハーフナー(白)が不発に終わるなど、チャンスを与えられた選手たちは、レギュラー獲りへアピールすることができなかった 【Getty Images】
だが、それ以上に私が気になったのが、久々にスタメンのチャンスを得た選手たちが、そのチャンスを存分に生かしきれていなかったことである。1トップのハーフナーは、ポストプレーの精度を欠き、ボールもなかなか収まらず、前半32分のシュートチャンスも枠をとらえることはできなかった。長谷部に代わって遠藤とコンビを組んだ細貝も、パスミスからピンチを招く場面があまりにも多かった(当人も「ポゼッションでのミスも多かったし、そういうミスが多いとチームとしても苦しくなる」と反省しきりであった)。体を張ったディフェンスで無失点に貢献した伊野波、そして右サイドからたびたび精度のあるクロスを放った酒井宏は及第点を与えても良さそうだが、さりとて吉田や内田篤人を脅かすような特長を発揮していたとは言い難い。
もちろん公式戦の限られた時間で、ポジションを奪うくらいのアピールをすることは容易ではない。逆に彼らが、現在のスタメン組の半分でも出場機会に恵まれていれば、もっと自信と余裕をもってプレーできていたのかもしれない。いずれにせよ今回のイラク戦では、あらためてスタメンとバックアッパーとの経験値の差が、そのままプレーに表れていたように思えてならないのである。唯一、途中出場ながら安定したプレーを見せていたのは、後半22分からトップ下に入った中村憲剛であろう。指揮官も中村に関しては「頭の良い選手なので、自分がピッチに立った時に何をすべきか、しっかり分かっている」と高い評価を与えていた。
W杯開幕までたかが1年、されど1年
さて、イラク戦から一夜明けた6月12日は、来年のW杯ブラジル大会の開幕からジャスト1年前に当たる。その記念すべき日に、日本がアジアでの戦いを終えてブラジルに旅立ったのは、偶然とはいえ実に象徴的な出来事に感じられる。果たして、今から365日後の日本代表は、どのようなグループに成長しているのだろう。バックアッパーはしっかり育っているだろうか。「本田不在」のオプションは確立しているだろうか。まだ見ぬ新戦力は何人いるだろうか。逆に今の主力から外れるのは誰だろうか。そして365日後の日本代表は、世界と伍するだけの組織力と個の力を併せ持ったチームになっているだろうか。
「この1年短いですが、考え方によっては1年もあるとも言えます」
W杯予選突破が決まった翌日の会見で、本田圭佑はこのように語っている。これからの1年が充実したものとなるか否か、そのカギを握るのがコンフェデ杯での戦いであることは衆目の一致するところであろう。南アフリカでベスト16に上り詰めたチームに、さまざまなマイナーチェンジを施し、ほぼメンバーを固定しながら駆け抜けてきた3年間。その成果が問われる一方で、世界との距離を測り、より勝利に近づくための改革の契機となるなら、私はコンフェデ杯で惨敗するのもまた良しと考える。いずれにせよ、イラク戦が終わったこの日から、日本代表の新たなる冒険がスタートする。その最初の大一番を見届けるべく、私もこれから一路ブラジルを目指すことにしたい。
<了>