タキ・イノウエという人物=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第7回
SNSでの発言内容が注目される
久しぶりに会ったタキ・イノウエからは、かつての彼が持っていたガツガツした欲望を感じることはできなかった。本人は昔と変わったつもりはないのだろうが、私にはより洗練されたように思えた。より世界を知ったことで、幾つもの道を見つけたというような感じを受けたのだ。かつては、“世界に出るための一本の道をなんとしてでもはい上らなければ”というどう猛とも思える印象を持っていたが、現在の彼からはその粘っこさは姿を消した。ただ、彼の時間は常人の我々の2倍の速さで進んでいるようだ。考え、答え、行動、結論、彼はそのいずれも他人より早く手に入れたいと望んでいるように思えた。それは、これまでの彼の人生が作りあげた、彼なりの時間の速度だろう。
欧米式のビジネス感覚
今、我が国ではグローバルビジネスという言葉が飛び交い、誰もが分かったような顔をして持論を展開するが、タキ・イノウエの話を聞くと甘っちょろいグローバルビジネスなんてどこにもないということに気づくはず。特にモータースポーツの世界は生き馬の目を抜く世界。立ち止まることも息つく暇もない。
タキ・イノウエは恐らくこれからも足踏みすることはないだろう。陰に日向に、日本の若い才能を支援しつつ、モータースポーツの世界に苦言を呈し続けることだろう。誰もが言いたいことを、彼は同じ目線で言い放っている。誇張も矮小(わいしょう)もない。それを読むと、少しずついろいろなことの真実が分かってくるはずだ。
変なオヤジだが、気になるオヤジだ。井上隆智穂は。
『AUTOSPORTweb』
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