本田圭佑がより輝くために必要な条件=W杯での躍進へ、背番号4が出した宿題
過去2戦とは全く違う連動性が生まれる
絶大な存在感を発揮している本田。W杯での躍進を狙う上で、チームメートにも『宿題』を出した 【Getty Images】
2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会アジア最終予選、オーストラリア戦前日の6月3日。日本代表に合流するや否や、本田圭佑は先輩DF今野泰幸にいきなりこう求めた。
1日のロシアカップ決勝、アンジ・マハチカラ戦で先発出場し、67分間プレーして中2日で迎える大一番。彼の体調が万全であるはずがなかった。本人も「コンディション自体は良くないけど、やれることをやろう」という割り切った気持ちだったという。そんな状態にもかかわらず、強気の要求をチームメートに突きつけるのだから、さすがは有言実行の男だ。自分に思い切りプレッシャーをかけた以上、あとはピッチできっちりと仕事をするしかない。「コンディションが悪かった分、守備とかでは貢献できなかったんで、攻撃に行った時、オフ・ザ・ボールの時には唯一、周りとの違いを出せるんじゃないかと思ってプレーしてました」と本田は決意のほどを打ち明けた。
実際、彼が入った攻撃陣は3月のヨルダン戦、5月30日のブルガリア戦とは全く違った連動性を感じさせた。「(香川)真司がトップ下に入ると仕掛けのスピードが速くなり、イケイケどんどんみたいな形になるけど、相手が奪った時に日本の前線を置き去りにできるから、カウンターの応酬のような展開になる。圭佑が真ん中に入った時は、相手はボールを取りたくても簡単には取れない。こっちの攻撃時間が長くなるから相手の体力を消耗させられるし、カウンターの勢いも出しづらくなる。両方の良さがあると思う」と今野は分析していたが、確かに本田がいる前線はボールキープの時間が長くなり、押し込む形も増えた。本田自身は「みんなゴールへの気持ちが強過ぎるあまり、カウンターを食らい過ぎていた」と反省材料を口にしたが、攻めの厚みが増したのは間違いない。
香川も認める絶大な存在感
後半アディショナルタイムに重圧のかかるPKをど真ん中に蹴り込んだことばかりに目が行きがちだが、本田はオーストラリア戦の90分間にわたって自身の役割を確実に果たしていた。本人としては納得できるパフォーマンスではなかったのか、試合後のミックスゾーンを素通りしたが、敵将、ボルガー・オジェック監督も「本田1人がピッチに立つだけで違いを生む」と潔く認めた。それほどインパクトが大きかったのだ。「今の代表は『本田のチーム』と言ってもおかしくない」という今野のコメントは、ザックジャパン全体の共通認識であるはずだ。
コンディション不良に悩まされた2年
彼が離脱するたび、日本代表は不安定な状態に陥った。今回の予選で日本は11年11月の北朝鮮戦、12年2月のウズベキスタン戦、今年3月のヨルダン戦と3敗しているが、いずれも本田が不在の時。アルベルト・ザッケローニ監督や選手たちが穴を埋めようと努力はしてきたが、どうしても結果は出なかった。
「圭佑がいない時に負け過ぎ。誰か1人がいないだけでチーム力がドッと落ちるのは本物じゃない。圭佑にも『どんだけ負けんねん』『俺がいない間になんで負けたか分析してる?』とか言われたけど……」と今野も困惑顔を浮かべるしかなかった。
そんなチームの実情から目をそらさず、歯に衣着せぬ物言いで仲間たちに問題点を投げ、鼓舞するのが本田である。オーストラリア戦前にも、長友佑都と自分たちが目指すべき方向性を熱っぽく議論し、メンタル面の引き締めを図った。川島永嗣も「1人ひとりが高い意識を口にするというのはお互いにとってのいいエキスや刺激になる」と彼らの貪欲なスタンスを歓迎していた。本田と長友が加わり、チームの空気がガラリと変わったからこそ、オーストラリアとの死闘で勝ち点1を手にできたと言ってもいいだろう。