本田圭佑がより輝くために必要な条件=W杯での躍進へ、背番号4が出した宿題
他のメンバーに『宿題』を突きつける
本田自身にも課題はある。仮に香川(中央)や長友(右から2人目)が所属するようなビッグクラブに移籍した場合は、それなりのリスクも伴う 【Getty Images】
「W杯優勝に向けて必要なもの? シンプルに言えば個だと思います。個と言うのは、昨日GKの川島選手がしっかりと1対1を止めたところをさらに磨く。今野選手が(ティム・)ケーヒルに競り勝ったところをさらに磨く。佑都と真司がサイドを突破したところ、そこの精度をさらに高める。ボランチの2人がどんな状況でも前線にパスを出せるように、そして守備ではコンパクトに保ち、ボール奪取を90分間繰り返す。岡崎選手や前田(遼一)選手が決めるところはしっかり決める。結局、最後は個の力で試合が決することがほとんどなので、どうやって自立した選手になって個を高められるか。この1年短いが、考え方によっては1年もあると考えられる」と彼は公の場で堂々と言い放ったのだ。
本田から出された『宿題』を他のメンバーたちは真摯に受け止めていた。「このレベルアップのことは僕もつねづね感じていた。他の国の選手たちもレベルアップしている中で、日本もそれ以上に速いスピードで成長していかないと追いつけない」と吉田麻也が言えば、清武弘嗣も「圭佑君が言っていたように、レベルアップさせるところは1人ひとり違う。自分はドリブル突破した後や決定力とかをもっと高いレベルでできるようにしたい」とあらためて強調していた。
そして盟友・長友は「僕は次のW杯で100パーセントやり切ったという気持ちで終わりたい。南アフリカW杯ではグループリーグを突破したとき、安心感や達成感が出てきたのが正直なところだった。そんなメンタルで決勝トーナメントを戦えるはずがない。自分のパフォーマンスをだし切れるはずがない。だからこそ、次は世界トップを目指すと。本当に強い信念を持ってやると。そのつもりです」と、強い決意を口にした。
この思いは本田も全く同じだろう。直近に迫るコンフェデレーションズカップについて「テストじゃないんでね。しっかり勝ちに行くんで。そこは揺るがないです。超強気で行きます」と、本気で優勝を狙う野心を押し出したのが、その表れである。チーム全体の意識を彼らと同じところまで引き上げることが、W杯本大会での躍進の絶対条件となってくるのだ。
リスクが伴うW杯1年前の移籍
しかしながら、W杯1年前の移籍というのはリスクが伴う。4年前にセルティックからエスパニョルへ移籍した中村俊輔もクラブでの出場機会を大幅に減らし、最終的に南アフリカ大会での出番を失った。本田に同じことが起きないとも限らない。複数のケガを抱える彼だけに、再びアクシデントに直面する危険もはらんでいる。本人は最悪のシナリオを回避する努力を欠かさないだろうが、ザックジャパンとしては予選を通して浮き彫りにされた本田不在時の戦い方を確立させておく必要がある。
今野が分析したように、香川をトップ下に置くならそれはそれで良い面もある。その長所をより強く押し出せるような意識や戦い方の変化がチーム全体に求められる。予選の間は基本的に同じ戦術、同じメンバーを貫いてきたが、ここから先は相手によって柔軟にシステムや戦術を変えられるような臨機応変さを見につけることも肝要だ。
「マンチェスター・ユナイテッドにいると、誰も周りに合わせるとかはないし、自分にボールをよこせという個性の強い選手ばっかり。でもお互いを尊重し合っているし、仲間を生かしている。そういうところはすごく勉強になります」と香川が語るように、世界トップクラブのような高度な個の共演が実現すれば、日本代表は間違いなく強くなる。本田という絶対的存在もその中で輝きを一段と増すだろう。
1年後の大舞台での大躍進を現実にすべく、本田圭佑もザックジャパンも足を止めることなく進化を続けていく。
<了>