日明兄さんが打倒・外国人の秘策を伝授

長谷川亮

スタミナが切れたら切れた時に考えればいい

6月9日「RINGS/THE OUTSIDER」合同大会でイギリスの強豪と対戦する渡辺竜也(写真前)と前田日明リングス代表 【t.SAKUMA】

 6月9日に開催される「RINGS/THE OUTSIDER」合同大会(神奈川・横浜文化体育館)ではアウトサイダー戦士とイギリス、中国選抜ファイターによる対抗戦が計10試合行われる。「ヘタしたら全敗」と前田日明代表が危惧する中、アウトサイダーからプロに進出し随一の戦績を上げる“沼津の一撃空手王”渡辺竜也との対談をセッティング。前田が海外勢の脅威を、対イギリス軍で大将を務める渡辺は迎撃の意気込みを語った。

――今週末に迫ったリングス×アウトサイダー合同大会では海外勢との対抗戦が大きな見どころとなっています。

前田 渡辺の相手はイギリスの打撃が強い奴でね(ジョシュ・ニール。ISKAイギリス・フライ級チャンピオン)。

渡辺 1試合だけ試合の映像があって事務局から提供してもらって確認済みです。総合の試合で、その試合は僕の相手が腕十字で勝っていました。でも見た感じ隙はあるかなと。

前田 イギリスの選手は200%プロ志望で、「趣味でやってます」なんてのとは全然違うんです。プロになるためにはどうしたらいいかと思って毎日過ごしている連中なので、そういった意味ではアウトサイダーの平均値より気持ち的にも体力的にも上になります。さらにその中で、日本で試合をするためにイギリスはイギリス、中国は中国で選ばれた奴だから、ヘタしたら全敗ですよ。 

――渡辺選手とジョシュ選手は、ともにプロキャリアを持つ同士の対戦となりますね。

渡辺 相手のレベルが上がれば上がるほど楽しくできるし、試合が1つの勉強・練習だと思って僕はやっています。だからより強い相手・レベルが高い相手とやれるっていうのは、すごくありがたいし楽しいですね。

前田 渡辺は完全にプロ志望だったし、どんどん強い奴とやらせてやらせたいよね。アウトサイダーからプロに行って、一番戦績がいいのはコイツなんです。アウトサイダーの連中に共通しているのはスタミナの計算だとかをしないこと。そうでなくてもまだ大したことない奴らが、スタミナの計算しながらやっていたりしたら伸びないんです。スタミナが切れたら切れた時に考えればいい。それでスタミナが切れて動けない体でしのげたら、それが成長になる。その経験を元に、スタミナが切れたから次は切れないよう体力をつけようってなるんです。でも、今はともすると練習が強くなるためではなく“練習のための練習”になっていて、毎日の儀式であったり無事に消化して小さな満足感を得るためのものになっている。

渡辺 僕はあまり「試合、試合」っていう風にはとらえず、試合も練習の延長線上で、試合で最高のパフォーマンスへ持っていけるように考えています。以前シュートボクシングのルールで試合をやらせてもらって(2012年7月、島田洸也に3RKO負け)、これは言い訳なんですけど慣れない形式でいつもの総合とはスタミナも全然使い方が違くて、もう1Rでバテバテになっちゃったんです。でも、その試合で経験を積んで体力が足りないとかいろいろ感じた部分があったし、たくさん成長できたところがありました。

前田 総合の打撃って特殊なんですよね。ボクシンググローブと違ってガードを固めても、隙間からパンチが入ってくる。打撃の選手がコーナーに詰めて連打すると一気に行っちゃうのはその違いなんです。だからこの試合も、渡辺がいつものように連打で行っても相手は効かなかった。それで相手にしたら「こっちのもんだ」と思う訳です。

渡辺 全然効かなかったですね。でもそうやって試合で経験をして、練習内容を変えています。練習で試合を想定して練習内容を変えるんじゃなく、僕の場合は試合でできなかったり気づいたことを練習に取り入れていくので、そこら辺がみんなと違うところです。だから練習では結構負けるんですけど、試合では勝つからみんな不思議がっています。 

前田 そうやってテーマを持って練習してるんでしょうね。やっぱり自分が一番苦手なことを練習したら、得意な奴にはやられてしまいます。でも、やられる方はそれで経験ができるし、「なぜ?」「なぜ?」と思って毎日毎日工夫していく訳です。 

キャリアの初めに外国人と対戦することが大事

前田代表の熱のこもったアドバイスに聞き入る渡辺 【t.SAKUMA】

――そういった取り組みをしてきたことが、渡辺選手の成長に繋がってきたのでしょうね。

前田 あとできれば自分より重い奴と練習した方がいいね。10キロ、15キロ重い奴とやっても極められないと自信がつきますから。

渡辺 その点は僕が小さくて周りに大きい人が多いっていうこともあって、クリアできていると思います。

――フィジカル差を感じることが多い外国人とは渡辺選手は初の対戦になりますが、その点に関してはいかがでしょう。

前田 相手もキックボクシングのタイトルを持って打撃に自信を持って来るだろうから、「打ち合っても勝てる」と思って打ちに来るのか、それとも打たせておいてタックルに来るのか。

渡辺 映像を見たら自分から掛かってくるっていうか、やっぱり自信があるんでしょうね。打撃がもつれて寝技に行って十字でパーンと取ってました。だから全部できるっていうことですよね。

前田 でも、本当にキャリアの初めの方にこうやって外国人との対戦を経験した方がいいと思います。昔は外国の選手は1Rはガッと来るけど2Rからはガクッと来るっていうのが定番だったけど、今はもうずーっと来る奴が当たり前じゃないですか。その中で自分はどうやって戦っていくかっていうのをやらないといけない。

――渡辺選手も言うように、試合で経験することでその後の練習・成長が変わってくるということでしょうか。渡辺選手はこれから対戦相手のレベルがいっそう上がってきますね。

渡辺 やっぱり打撃も寝技も全部できないと。寝技だけ・打撃だけできるっていうのは、それを潰してしまえばその人の特徴はなくなって、あとはもうやりたい放題だと思ってこれまではやってきました。でも今回は打撃を潰せばこっちの土俵かって言えば寝技ができるし、寝技を潰しても打撃ができるので、そこら辺はいつもと違うなっていうのは感じています。でも、周りにも外国人とやるって言ったら反響がいいし、ここは逃したくないですよね。自分の株を上げるためにも。あとはいつもと変わらないです。

前田 今は相手の研究をしようと思ったらYouTubeで簡単に、何回でも見られるし、イギリスだからレベルが低いとかそういうことはないですよね。それこそヨアキム・ハンセンみたいに、北欧で誰が総合やってるの?っていう国から出てきてあれだけレベルの高い選手だっている訳だから。おそらく自分でものすごく研究して、コピーしてっていうのをやってきたんだろうね。でも、そういうことができる。逆に言えば渡辺だってそういうことをやらなきゃいけないんだよ。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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