吉田秀彦「柔道界、良いニュースも出そう」
11年ぶり柔道大会出場へ公開練習

がむしゃらにやっている姿を見てもらいたい

11年ぶりとなる柔道大会出場へ公開練習を行ったバルセロナ五輪金メダリストの吉田秀彦
11年ぶりとなる柔道大会出場へ公開練習を行ったバルセロナ五輪金メダリストの吉田秀彦【スポーツナビ】

 暗雲漂う日本柔道界にレジェンドが光を射す。1992年バルセロナ五輪の男子柔道78キロ級金メダリストの吉田秀彦(43歳)が3日、自身が監督を務める実業団パーク24の目黒道場で11年ぶりの柔道大会出場となる全日本実業団対抗大会(6月15〜16日、岡山県体育館)に向けた公開練習を行った。


 約1カ月前から本格的に練習を始めたという吉田は「頭で思っているのと体(の動き)が違う。練習していても歯がゆさだけがある。昔ならできていたのにと思うところがある。足が上がらなくなってきているし、握る力が弱くなっているから(相手の道着を)持ってもすぐに切られてしまう。それでも練習をやって筋肉痛にもならなくなったし、ある程度は投げられるようになってきた。楽しみ半分、不安半分」と苦笑い。練習では現役選手に投げられて荒い息遣いを見せる場面もあったが「(鮮やかな一本勝ちなど)昔の印象を持たれている方もいると思うけど、今回のテーマは『必死』。がむしゃらにやっている姿を見てもらいたい」と胸を張った。

 柔道界は今年に入って全日本女子の体罰問題に端を発し、助成金不正問題やわいせつ問題による現職理事の辞任など暗いニュースばかり。金メダリストの公式戦復帰で話題を提供する吉田は「悪いニュースばかりじゃなくて、良いニュースを一つでも出していけるようにみんなが頑張らないといけない。そうじゃないと日本の柔道は何の魅力もなく終わってしまうんじゃないか。柔道を良くしていこうと思って言っているなら、非難だけじゃなくて良いことももっと出そうよ」と柔道界の仲間に呼びかけた。

体罰と教育は紙一重…日本柔道再建へ持論を展開

「ある程度は投げられるようになってきた」と復活へ手ごたえ
「ある程度は投げられるようになってきた」と復活へ手ごたえ【スポーツナビ】

 試合出場を決断した背景には、現在の日本柔道界への思いもある。「少しでも明るい話題を提供できればいいかなと思った。誰も(話を)取り上げてくれなければ出場しなかったかもしれない」と笑った吉田は、1月に女子トップ選手が指導陣から暴力やパワーハラスメントを受けたと告発した問題に触れ「体罰と教育は紙一重だと思う。一人で練習をしているとどうしても甘える。そのときに叱咤激励があったから僕はやってこれた。それが体罰かというと、違うと思う。日本には外国とは違う文化がある。日本は日本人らしい教育でも良いんじゃないかと思う。行き過ぎた体罰は良くないけど、愛のある、相手のことを思って(厳しく)やることは、人を成長させるためには必要じゃないかと僕は思う」と持論を展開。

 告発を受けた責任を取る形で明大の後輩にあたる園田隆二前全日本女子監督が辞任した件については「弁護するわけじゃないけど、僕が見ていた限りでは園田なんて本当に一生懸命にやっていた。選手も面と向かって言えばいい。誰も出てこないで人を非難して……。あれだけ愛情を持っていた奴がなんでこんな風に……と思う。確かに口が悪いところはあるし、反省しないといけないところだと思うけど」と嘆いた。

全日本選手権? 挑戦は何でもしていきたい

不祥事が続く日本柔道界へ明るいニュースを提供できるか!?
不祥事が続く日本柔道界へ明るいニュースを提供できるか!?【スポーツナビ】

 元々、大会出場のきっかけはチームが1部から3部までエントリーする中で、海外遠征を行う選手もいることから人数不足に陥ったことだと話す。ただ、吉田が柔道の公式戦復帰で勝利を挙げれば、自身が望む明るいニュースを提供できる。「体はボロボロ。昔やったところが、今になって痛んでいる。左肩、右ヒジ、右ヒザ……」と満身創痍だが「練習のときは、何くそと思って精一杯やっている。団体戦なのでチームに迷惑をかけないように頑張りたい。(3部の)1回戦は補欠の登録になっているけど、1回戦から出ますので、ぜひ楽しみにして下さい」と意欲を見せ、初戦からの出場を約束した。


 吉田は明治大学柔道部の監督をしていた2002年の全日本柔道選手権を最後に一線を退き、プロ格闘家に転身。2010年4月に総合格闘技を引退後、1年が経過して全柔連の登録規定をクリアした2011年に指導者として再登録を行い、パーク24柔道部監督に就任。ロンドン五輪の男子66キロ級銅メダリスト海老沼匡らを指導している。

 プロ格闘家としての活動終了から3年が経過し、全柔連の競技者登録が可能となった今年、ついに選手としての大会出場に踏み出した。今大会出場後の選手としてのプランは未定だが、優勝経験のない全日本選手権への出場意欲を聞かれると「挑戦は何でもしていきたい。練習しながら出られると思えば、皆さんに報告したいと思う」と完全否定はしなかった。古い時代の良さを知り、再び畳に上がる中年の汗が、柔道界に何かを伝えようとしている。

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