添田豪「自分に負けて終わりたくない」=躍進の日本男子テニス 存在感増す28歳

辛仁夏

トップ100位入りで生まれた心の余裕

4月、デ杯アジア・オセアニア・ゾーン1部2回戦で韓国選手と戦う添田 【写真は共同】

 「ランキングを上げるチャンスだった」というチャレンジングな長期の米国遠征をこなした2、3月。しかし、直後に行われた4月初旬のデ杯で体調を崩した。遠征の疲労が残ったままの状態で大会初日を迎え、いきなりフルセットを戦ったことが大きなダメージになったのだ。デ杯後にすぐ欧州遠征に飛んだが、体調不良のままではツアーを戦い抜くことはできないと判断して1試合で帰国。体調を万全にすることを最優先にして10日間の休養を取り、うち5日間は完全オフにしたという。

――トップ100位に入って、そこからなぜ自分が強くなったと思いますか?

 何かを変えたというよりも、いままで目標にしていた世界ランキング100位を切れたことで、ある程度の自信を持てて(心に)余裕が生まれた。勝たなきゃいけないという堅苦しい考え方から、いろいろな発想が出てきたことが大きかったんじゃないかと思います。

 テニス的なことを言えば、前よりも攻める意識を持つようになったし、前に行く圧力は以前よりも増やしています。そこは前とは違うかなと思いますね。あとは、少し体格も大きくなりました。

――100位をなかなか切れなかった24、25歳のとき(3、4年前)は、どんな気持ちでしたか?

 どちらかというと苦しんでいた部分はありましたが、限界はあまり考えなかったです。早く目標を達成したいと常に考えていました。
 自分自身に負けたくないという気持ちは常に持っていて、一度設定した目標をどうしても達成したかった。達成しないで終わって自分に負けてしまうのが嫌で、そのまま終わりたくないという思いはありましたね。

――もがき苦しんでいたときは、何が必要だと思いましたか?

 いろいろとアドバイスはもらいましたが、どちらかというと自分で考えて選択していたほうなので、とにかくけがをしない身体作りを徹底してやっていました。いくらチャンスが目の前にあってもけがをしてしまうとそれがつぶれてしまい、もったいないですから。

――『けがをしない身体づくり』は、どのように取り組んだのですか?

 特に20代の前半は(筋力)トレーニングを多く取り入れてきました。とにかくその量が多かろうが少なかろうが、毎日決められたことはやっていこうと。
 ほかには、食事の取り方を特に意識しました。以前は線が細くて体重もなかなか増えなかったので、特別な食事というよりもバランスの取れた普通の食事の中で、ちょっと多めに取ったり、練習前や練習後のリカバリーのために、何をどう食べればいいのかを意識したりしてやっていました。
 24、25歳くらいから意識して変えていくようにしたんですが、そこからけがも減ってきたと思います。

「常に自分を信じ切れるかが大事」

自信を持ち続ける難しさを語る添田。しかし、そこをクリアする事にもやりがいを感じている 【スポーツナビ】

――昨年の自己最高位47位を取れたとき、そのステージに身を置いてみてどうでしたか? その実力を自分でも実感したのか、まだそのレベルには足りていないと思ったのでしょうか?

 常にコーチから言われていることですが、もう少し自分を信じないといけないと。『トップ50に常にいてもおかしくない選手だ』と言われていて、自分がそれを常に信じ切れるかが大事だと思う。(自己最高位をマークした)そのときは、まだ半信半疑だった部分があって、いまはその殻を破っていかなければいけない。そこは、自分自身が変わらないと変わらないので、とにかく自信過剰なくらい自信を持っていいんじゃないかと思います。
 どちらかというとネガティブ思考なのでそこをもう少し変えて、うまくいっていないときでも自信を持ち続けることが大事なんじゃないかなと思いますね。

――自信を持ち続けることは、やはりそれほど難しいことでしょうか?

 自信を常に持ち続けないと強い選手には勝てない。一つの目標としてはいますが、やっぱり難しいですね。ただ難しいほうが自分にとってはやりがいがあるし、目標設定するなら簡単なのは面白くないですから。ちょっと難しい目標設定にしてそこに向かっていくことで、自然とレベルアップして目標を達成できると思う。少し無理してでもそういった目標設定は大事かなと思います。

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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