長嶋氏が肉声披露、松井氏は国民栄誉賞に「身に余る光栄」=W国民栄誉賞ドキュメント
国民栄誉賞授与式を前に行われた引退セレモニーで、長嶋茂雄氏とともに場内一周しファンの声援に応える松井秀喜氏=5日午後、東京ドーム 【写真は共同】
国民栄誉賞表彰式に先駆けて行われた引退セレモニーでは、松井氏があいさつに立った。昨年12月28日の引退表明以降、日本のファンの前で話すのは初めて。濃紺のスーツ姿で登場した松井氏は「皆さまからの温かい声援が僕に元気を与えてくれました」と感謝の言葉を口にした。あいさつのあとは長嶋氏とともに特注のオープンカーに乗り、場内を1周しファンの声援に手を振って応えた。
続いて、「3」「55」と描かれた赤じゅうたんの上で行われた国民栄誉賞表彰式では、安倍晋三内閣総理大臣から表彰状、記念の盾、黄金のバットが贈呈。首相が「おめでとうございます。長嶋さんが演じた数々のメークドラマに、アンチ巨人の私も手に汗を握りながらラジオに耳を傾けていました」と思いがけないカミングアウト込みのあいさつをしたのを受け、長嶋氏は「本当にありがとうございます。松井くんもいっしょにこの賞をいただいたこと、厚く御礼申し上げます」と、ファンの前で力強くスピーチ。これが2004年3月4日に脳梗塞で倒れて以来、球場でファンに向かって披露する初めての肉声だった。
一方の松井氏は、国民栄誉賞受賞者である王貞治氏、衣笠祥雄氏の名前も挙げ、「偉大なお三方の背中を追いかけ、日本の野球の、野球を愛する国民の皆さまの力に少しでもなれるように努力していきます」と誓った。
フォトセッション後、「長嶋」コール、「松井」コールに応えるような形で長嶋氏が左手を大きく上げると、超満員の東京ドームからはひときわ大きな歓声。続けて、長嶋氏がバッター、松井氏がピッチャー、そして原辰徳・巨人監督がキャッチャー、安倍首相が球審を務める始球式が行われた。
「4番サード、長嶋茂雄、背番号3」のコールに呼びこまれ、上半身ユニホーム姿の長嶋氏が登場。松井は上下ともに2002年以来となるジャイアンツの55番ユニホームを身にまとってマウンドへ。また、安倍首相は2人から贈呈された第96代内閣総理大臣にちなんだ背番号「96」のユニホームでホームベースへ駆け寄った。
左手でバットを握って構える長嶋氏に対し、松井が投じたのは山なりの内角高めのボール。これを長嶋氏がよけることなく果敢にフルスイングするも空振り。ボールを打つことができず、長嶋氏はちょっと悔しそうな表情の笑顔を浮かべたものの、国民栄誉賞授与式で実現した夢の“師弟対決”に、場内からはこの日一番の祝福の声と拍手が送られた。
松井氏「またいつかお会いできることを夢見て…」
「ジャイアンツファンの皆さま、お久しぶりです。2002年、ジャイアンツが日本一を勝ち取った直後、ジャイアンツに、そしてファンの皆さまにお別れをお伝えしなければならなかった時、もう二度とここに戻ることは許されないと思っていました。しかし、今日、東京ドームのグラウンドに立たせていただいていることに、いま感激で胸がいっぱいです。
1992年のドラフト会議で私をジャイアンツに導いてくださったのは長嶋監督でした。王さんのように1シーズンで55本打てるようなバッターを目指せと背番号『55』をいただきました。将来は立派にジャイアンツの4番を務めないといけないと思い、日々、努力をしてきたつもりです。ジャイアンツの4番を任せていただけるようになり、誇りと責任をもって毎日プレーしました。ただ、その過程にはいつも長嶋監督の指導がありました。毎日、毎日、二人きりで練習に付き合っていただき、ジャイアンツの4番バッターに必要な心と技術を教えていただきました。また、その日々がその後の10年間、アメリカでプレーした私を大きく支えてくれました。そのご恩は生涯忘れることはありません。
今日、ファンの皆さまに久しぶりにお会いしたのにも関わらず、再びお別れのあいさつとなってしまい、もう一度プレーする姿をお見せできないのは残念ですが、これからも僕の心の中には常にジャイアンツが存在し続けます。どういう形か分かりませんが、またいつか皆さまにお会いできることを夢見て、また新たに出発したいと思います。
ジャイアンツでプレーした10年間、そしてアメリカでプレーした10年間、いつもいつも皆さまからの温かい声援が僕に元気を与えてくれました。ファンの皆さま、長い間、本当に本当にありがとうございました」
長嶋氏が生スピーチ「本当にありがとうございます」
「国民栄誉賞をいただきまして、本当にありがとうございます。松井くんもいっしょにこの賞をいただいたこと、厚く御礼申し上げます。ファンの皆さま、本当にありがとうございました。よろしくお願いします」
松井氏「光栄ではありますが、同じくらい恐縮」
始球式で、松井秀喜氏の投球にバットを振る長嶋茂雄氏。捕手は巨人の原監督、球審は安倍首相=5日午後、東京ドーム 【写真は共同】
「私はこの賞をいただき、大変大変光栄ではありますが、同じくらいの気持ちで恐縮しています。
私は王さんのようにホームランで、衣笠さんのように連続試合出場で何か世界記録をつくれたわけではありません。長嶋監督の現役時代のように日本中のファンの方々を熱狂させるほどのプレーをできたわけではありません。僕が誇れることは日米のすばらしいチームでプレーし、すばらしい指導者の方々、チームメート、そしてすばらしいファンに恵まれたことです。
今後、偉大なお3方の背中を追いかけ、日本の野球の、野球を愛する国民の皆さまの力に少しでもなれるように努力していきます。このたびは身に余る光栄ではありますが、私を支えてくださったファンの皆さま、そして野球で関わったすべての方々に感謝申し上げます」
<了>
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