全米中が悲しんだコービーの負傷離脱=NBA史に輝くスターの再起はいかに

杉浦大介

悲劇となったアキレス腱断裂の重傷

アキレス腱を断裂し、苦悶の表情を浮かべるコービー。全米中のスポーツファンがコービーの離脱を嘆いた 【Getty Images】

 米国・プロバスケットボール、NBAの2012−13年のレギュラーシーズンも大詰めを迎えていた4月12日(日本時間13日)――。ロサンゼルスで行われたゴールデンステート・ウォリアーズ対ロサンゼルス・レイカーズ戦の第4クオーターに、全米のスポーツファンが息を飲む悲痛な場面が待っていた。

 試合時間も残り1分を切ったところで、突破を図ったレイカーズのコービー・ブライアントが左足を痛めて転倒。何とか自ら立ち上がったものの、その後もプレーを続けることはかなわなかった。

「自分が覚悟したそのケガではないことをただ祈っていた」

 そう語り残したコービーは、コートに倒れた瞬間、アキレス腱が切れていることを即座に感知したのだという。実際にその後の診断で左足アキレス腱の完全断裂が確認され、すぐに手術を受けることを余儀なくされた。

 米スポーツ界を代表するスーパースターがこれほどの重傷を負い、大きな反響があとに続いたことは言うまでもない。
 コービーがコート上で左足を抱えてうずくまるシーン、足を引きずりながらも何とか最後の2投のフリースローを沈めたシーン、そして試合後に真っ赤な目で記者たちの質問に答えるシーンは、同日のスポーツニュースで繰り返し流された。翌日の手術後には全治まで6〜9カ月を要する見込みと発表され、ファンの間からは再びため息が漏れることになったのである。

不振のチームをけん引し続けたコービー

 コービー、ドワイト・ハワード、スティーブ・ナッシュ、パウ・ガソルという空前の“ビッグ4”をそろえて優勝候補の一角に挙げられていたレイカーズだったが、蓋(ふた)を開けてみれば今季は誤算の連続だった。

 故障者続出、HC(ヘッドコーチ)の交代(マイク・ブラウン氏を解任)など多くのアクシデントに見舞われ、優勝どころかシーズン終盤までプレーオフ出場すらも危ぶまれる始末。そんなチームを“約束の地”に導くべく、17年目を迎えたコービーはフル回転を続けた。

 今季の平均出場時間は過去6年で最長で、特に4月の6試合では平均45.2分という長時間をプレー。いかにコービー本人が望んだからと言って、34歳の選手に大きな負担をかけたことに関しては、故障発生後にレイカーズのマイク・ダントーニHCの責任を問う声まで挙がった。そんなアンフェアに思える批判が飛び交うほどの騒ぎになったことも、コービーの偉大さを象徴していると言えるだろう。

 1996年にデビュー以来、ファイナル制覇を5度も達成し、得点王2度、MVP1度、オールスターMVP4度など輝かしい業績を積み上げてきた。06年には史上2位の1試合81得点というとてつもない記録を作り、今年3月末には通算得点でウィルト・チェンバレンを抜いて歴代4位に浮上。故障に強く、常に鍛錬(たんれん)を忘れず、飽くなき向上心を秘めたスコアリング・マシンは、紛れもなくわれらの時代を代表する最高級のスーパースターであり続けてきた。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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