全米中が悲しんだコービーの負傷離脱=NBA史に輝くスターの再起はいかに

杉浦大介

コービーがこのまま終わるはずがない

レブロン(左)もコービーの復帰を望む。再び2人の対決を見られるのか 【Getty Images】

 それほどの実績をすでに積み重ねてきた大ベテランがアキレス腱断裂という大ケガを負えば、本来ならば選手生命の危機と目されて当然なのだろう。コービーが倒れた直後にも、引退の可能性を語る声が一部から飛び出していた。

 しかし、当のコービーは試合後の会見で即座に再起を宣言。そして当日の深夜にも、自身のフェイスブック上で、怒り、不安、決意が入り交じったメッセージを書き残している。

「耐えられないほどの腹立たしさだ。なぜこんなことになったのか? 35歳にしてこのケガから回復しろと言うのか。これが僕の物語の終わりなのかもしれない。老いに敗北したのかもしれない。いや、そうではないかもしれない! いつの日か、新しいキャリアの始まりが来る。今日はその日ではない」

 再起の道は、口で言うほど簡単なものではないだろう。長く辛いリハビリの果てに、故障前と同じ状態に戻れる保証はどこにもない。8月には35歳を迎えるコービーにとって、カムバックロードは時間との戦いでもある。

 ただ……それでもコービーならやり遂げるのではないかと考えるメディア、関係者は多い。その根底にあるのは、“あのコービーがこのまま終わるわけがない”というシンプルかつ強固な信頼と尊敬である。

ライバル・レブロンも待ち望む復帰

「僕はバスケットボールをプレーするのが好きだ。本当に大好きなんだ。好きなことに対して情熱を保てるのは、どんな職業でも同じじゃないかな。大工であろうと、建築家であろうと、ライターであろうと、もしも自分の職業を愛しているなら、それに対する情熱は無限のはずなんだ」

 今季開幕前にコービーにインタビューする機会があった際、彼の底知れぬモチベーションについて尋ねると、そんな答えが返ってきた。

 実際に彼のコート上でのプレーを見たことがある人なら、その言葉がただ口先から出たものではないと気付くはずだ。並外れた闘争心ゆえに一部のファンから疎まれることはあろうとも、心底では誰もがすごさを認めていて、彼がこうしてコートに立てなくなったことを寂しく思っている。

「コービーに起こったことは残念だ。(しかし)あのケガから帰って来れる選手がいるとすれば、それはコービーしかいない。最善を願っているよ」

 マイアミ・ヒートのレブロン・ジェームズが自身のツイッター上で残したそんな言葉は、すべてのライバル、ファン、メディア、関係者の思いを代弁していると言って良いだろう。

 エース抜きのレイカーズはそれでもシーズン最終日に何とかプレーオフ進出を決め、21日(日本時間22日)からポストシーズンに挑むことになる。その一方で、13日に手術を受けた“ブラック・マンバ”(コービーの愛称)の再起に向けた戦いはすでに始まっている。
 
 リハビリは長く厳しいはずだが、“無限の情熱”を持つ男がこのまま沈んだままでいるはずがない。大歓声の中で目映い光量を浴びて、背番号24を背負ったコービーが、再びコートに立つ日を今から楽しみに待っておきたいところである。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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