北島康介の泳ぎに変化、完全復活なるか=競泳日本選手権で見えた課題
さすがの北島も50メートルは対応できず
北島本来のスピード感と軽快さはなくなったものの、あまり良くないように見える泳ぎこそが、今大会で北島が今持てる力を最大限発揮するための手段だったのである。
しかし50メートルでは、さすがに北島も対応し切れなかった。100メートルでは冷静に対応できたものの、たった50メートルでは落ち着く時間がない。上半身のパワーとテンポで、出ないスピードをカバーをしようとしていたものの、それがさらに泳ぎを空回りさせてしまった。タイムを見るとよく分かる。100メートル決勝の前半50メートルが28秒45であるのに対して、50メートルは予選こそ27秒97で泳げたものの、決勝は28秒05。100メートルのタイムから考えれば、27秒6前後は出ていいはずだ。
従来のように、抵抗の少ない姿勢でストロークもキックも効果的に推進力を生み出していれば、タイミングを崩さずテンポを上げられれば、それだけスピードも上がるところだが、今回はただ単にテンポだけが無駄に上がり、推進力を生み出せない空回りになってしまった。
北島は100メートル決勝のレース後に「悪いときは、水の中に入ると重いなと感じる。バランスが少し悪くなるだけで普段のキックができなかったり、感覚が良くなかったりする。平泳ぎは難しいなと感じる」と話した。“キング”北島の平泳ぎは、パワーがありすぎても、ただ泳ぎのテンポを上げるだけでもダメ。ストロークとキックのタイミングとバランス、そして高いボディーポジションが生み出すスムーズな重心移動が最高の組み合せになって、初めて最大限のパフォーマンスを発揮できるのである。
バルセロナは世界新記録を出した縁起のいいプール
50メートル決勝を終えた後、北島は「もし世界の舞台で戦えるチャンスをもらえるなら、しっかりと力を出したいと思うし、チームに少しでも貢献できるような泳ぎをしたい」と話ていたが、その思いはつながった。くしくも、バルセロナでの世界選手権の会場は、100メートル、200メートルの(当時の)世界新記録を樹立して2冠を達成した2003年の世界選手権と同じで、縁起のいいプールだ。
残り3カ月、北島のメンタルには何も心配はない。あとはフィジカル強化と調整、それに合わせたテクニックの調整ができれば、心・技・体がそろったキングの姿を情熱の国、スペインで見せてくれるだろう。
<了>