大宮アルディージャが負けない理由=徹底した守備で新記録樹立なるか
3位に位置する強さの秘密とは
好調の大宮を支えるボランチの金澤(右23番)。リーグ新記録が懸かる浦和戦でも注目が集まる 【写真は共同】
5月2日に64歳の誕生日を迎える、Jリーグ最年長監督のズデンコ・ベルデニック率いる大宮。昨季から続くリーグ戦の無敗記録を「17」にまで伸ばし、第6節終了時点で勝ち点14のリーグ3位につけている。その強さの秘密はどこにあるのだろうか。
チームをけん引するボランチ“金澤”の存在
ベルデニック監督は就任後、まずは残留を目的とし、守備の練習から取り掛かった。守備ブロックの形成と、ボール奪取からのカウンター攻撃の練習を繰り返し行う。練習の意図は、攻守の切り替えの早さと守備意識の徹底だ。
その過程で頭を悩ませたのは、攻守においてバランスの良い選手を配置することだった。今でこそ、ボランチの一角としてチームをけん引する金澤だが、ベルデニック監督はチーム再編当初は不慣れな右サイドハーフで起用。これには金澤自身も「やりづらさがありました。攻撃にも絡めなかった」と話す。しかし、ベルデニック監督はその守備力に注目し、鈴木淳前監督が育て上げた青木拓矢とダブルボランチを組ませることを決断する。
金澤と青木は最終ラインとの連係も良い。どちらかのサイドバック(SB)が上がった際には、もう一方がセンターバック(CB)との間に下りて、CBが開いたときは、そのギャップにどちらか一人が必ず下がっていく。CBも、昨年なら相手の攻撃につられて大量失点することもあったが、今はスッと引いていく。「まずボランチとCBが一度引いて相手のスペースを消す、それからボール奪いにいく」。ベルデニック監督は各ポジションの役割の明確化と同時に順序も確立させた。
大宮の“ボールを奪われた後の戻り”の速さ、正確さ、強さはリーグの中でもズバ抜けている。2枚のボランチとディフェンスの4枚の計6枚で、どんな攻撃でも守り切る現在の体制をベルデニックは築き上げた。
その体制の効果が顕著に表われたのが、C大阪戦で前半に柿谷曜一朗が何度か裏を取ろうとした場面だ。大宮は、中盤の金澤と青木のダブルボランチが何度もはじき返し、柿谷の侵入を防いだ。また6日のFC東京戦でも、高橋秀人と長谷川アーリアジャスールの効果的なパスをことごとくはじき返したばかりか、配球そのものを防ぐシーンさえ見られた。
中でも特に存在感を発揮した金澤は、高校1年生のときに大宮ユース1期生として加入した。当時の大宮はピム・ファーベーク監督の下、4−4−2のゾーンディフェンスを取り入れており、金澤も徹底してこの戦術をたたき込まれた。C大阪戦でもその経験をフルに生かし、事前に危険なところを消し、危ない場面に現れては体を張ったプレーを何度も見せていた。大宮が思うように勝ち星を拾うことができず、苦しみ続けた歴史を知るこの29歳のベテランは、選手として円熟期に入り、オールドファンや新しいファンからも愛されている。「オレンジの魂」を持つ金澤の活躍が、チーム躍進の原動力であることは間違いない。