大宮アルディージャが負けない理由=徹底した守備で新記録樹立なるか

上野直彦

「まるで先生のような人」

就任以来、「教授」のあだ名で選手から親しまれているベルデニック監督。大宮の強さの原動力となる守備を構築した 【写真は共同】

 今の大宮は、練習においても特徴的だ。紅白戦などでもスタメン・サブ組を関係なしに何度もシャッフルし編成する。常に緊張感を持たせ、選手間に競争意識を持たせている。またFW長谷川悠によれば、「選手が考えた上で積極的にやったミスは『OK!』と言われます」という寛容さで、ベルデニックは選手の新しいトライを奨励している。「まるで先生のような人」(長谷川)という表現は的確で、監督と選手というよりは、むしろ先生と生徒の関係に近いのかもしれない。

 現在、監督自身が挑戦しているのは攻撃面でのトライだ。確かに守備は安定したが、フィニッシュの精度はまだまだ。トップにボールを当てて中から相手をはがすことや、大きなサイドチェンジからの攻撃練習も見られるようになった。

 かつてベガルタ仙台を解任され帰国した際、オーストリアでアーセナルやアヤックスの練習を見学する機会を得て、大変勉強になったという。守備面が安定してきたら、その経験を生かす練習が取り入れられるときが来るかもしれない。攻撃面での新しい材料が加われば、大宮は数年続く残留争いから上位争いできるチームに進化していくだろう。

Jリーグ新記録が懸かるダービーマッチ

 20日の埼玉ダービーはリーグ2位と3位の上位対決。今後のリーグの行方を占う一戦でもある。第6節では大宮はエース・ズラタンが技ありゴールを決め、浦和レッズは今季鹿島アントラーズから移籍してきた興梠慎三の初ゴールが生まれた。これまでの大宮は逃げ切る形での勝利が多かったが、C大阪との試合で見せたように、接戦でも勝ち切る強さを身につけた。一方、昨季は「個」で戦うことが多かった浦和は、今季から「チーム」で戦う形に変化した。失点も4失点とリーグ最少を誇り、守備も安定している。また両チームとも2週間で5試合の連戦を終えており、今週は休養もあり気力・体力ともに充分だ。

 大宮の攻守のかなめ・金澤は柏木陽介や原口元気とマッチアップする可能性が高く、この2人を止めることができるかに注目が集まる。一方の浦和はここ2年間埼玉ダービーでの勝利がなく、そのジンクスをひっくり返せるかにも注目が集まる。サッカーを知り尽くした両監督がどのようなさい配を振るうのか。見所が尽きない埼玉ダービーだが、今季は最高の舞台が整ったといえよう。

<了>

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。スポーツライター。女子サッカーの長期取材を続けている。またJリーグの育成年代の取材を行っている。『Number』『ZONE』『VOICE』などで執筆。イベントやテレビ・ラジオ番組にも出演。 現在週刊ビッグコミックスピリッツで好評連載中の初のJクラブユースを描く漫画『アオアシ』では取材・原案協力。NPO団体にて女子W杯日本招致活動に務めている。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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