東京は五輪招致のライバルをリードできた?=IOC評価委員会の3都市視察を検証
純粋に開催計画を調査するIOC評価委員会
これを機にIOCは評価委員会を設け、各都市から事前に提出された立候補ファイルを検証する現地視察を実施。調査の結果を評価報告書にまとめ、各IOC委員の開催都市選定の材料としている。また、立候補都市には評価委員会受け入れの予算をできるだけ抑えるよう通達もしている。
こうした経緯からも評価委員会の目的があくまで開催計画の技術的調査であることが分かる。実際、評価委員たちは朝早くから夜遅くまでテクニカルプレゼンテーションやサイトビジット(会場予定地の視察)、メンバー同士のミーティングなど過密スケジュールをこなす。一部、公式晩さん会のような華やかな行事もあるが、盛大なもてなしは期間中、一度きりである。
オールジャパン体制で東京の“本気度”をアピール
20年招致においては、政権交代を果たした自民党が民主党時代にも増して招致活動を後押し。経済界からも張富士夫氏(トヨタ自動車株式会社・代表取締役会長)という財界のトップが加わり、評価委員会のプレゼンテーションでも強力なサポートをアピールした。張氏は11年から日本体育協会会長も務めている。
評価委員会の視察中にはIOCの独自調査の結果、都民の支持率が70%に上ったことも発表された。47%にとどまった昨年5月の調査から23ポイントも上昇。また、クレイグ・リーディー委員長ら評価委員たちが皇太子殿下を表敬訪問したことも大きなインパクトとなった。オリンピック・パラリンピック招致において、その国の皇族や王族が登場する場面は通例となっており、12年ロンドン招致の評価委員会ではエリザベス女王自らプレゼンテーションに立っている。東京は16年招致のときも皇室に働きかけを行ったが協力は得られず、今度こそ国を挙げて本気の招致活動を行っているのだという姿勢をアピールできた格好だ。その満足感が猪瀬知事の「今回はオールジャパン」という言葉に込められている。
評価委員の求める回答を連発したプレゼン
「16年招致からの情報の蓄積と海外の専門家からのアドバイス、競技会場計画に対する各国際スポーツ競技連盟からの指摘の数々が評価委員たちを納得させる回答につながりました。また、プレゼンテーションや質疑応答にあたる人間の人選も組織の肩書きや立場にこだわらず、その分野に最も詳しい適任者をそろえたことが効果的だったと思います」
さらに、「結局のところ、IOCも完璧な回答を求めているわけではないんです」と澤崎氏。「立候補都市が現在の課題を理解し、今後発生するだろうリスクも承知しているかどうか、そしてIOCや五輪を取り巻く関係各所と調整しながら計画を進めていく姿勢や組織力があるかどうか、そこを見ているのです」と招致活動2回目にして得た率直な感想を述べている。