東京は五輪招致のライバルをリードできた?=IOC評価委員会の3都市視察を検証
執念のマドリード、勢いづくイスタンブール
一方、市民の支持率83%のイスタンブールは急速な経済成長に加え、03年から安定政権を築くエルドアン首相を中心にオリンピック・パラリンピック招致が真の国家プロジェクトであることを強調。開催計画のアキレスけんとされてきたヨーロッパ有数の交通渋滞に対しても、今年10月に運行されるマルマライ鉄道計画などの説得力のある解決策を提示した。また、成長著しいトルコのシンボル都市として「イスラム圏初の五輪開催」をうたい、ボスポラス海峡東側のアジアと西側のヨーロッパの両方に競技会場を建設。東西の架け橋になるとともに、イスラム圏全体の民主化や人権問題を飛躍的に解決すると力説した。さらに、人口の約50%が25歳以下の若者であることも強調し、五輪に使用される競技施設は子供たちの未来のための投資と位置付け、スポーツを通じた社会平和や教育を目指すIOCの理念にも訴えた。
評価委員会の全日程を終えたリーディー委員長は、東京を「Huge Impression」、マドリードを「Great Impression」、イスタンブールを「Excellent Impression」と評している。言葉を変えただけで招致委員会の対応を褒めたたえている点は同じだ。
大規模型五輪か、成熟都市の五輪か
今回IOCが既定路線の大規模型五輪を選択するか、それとも成熟都市の堅実な五輪開催を選択するか、そのあたりの動向も注目されるところである。評価委員会の調査結果は6月末までに評価報告書にまとめられ、7月にスイス・ローザンヌのIOC本部で開かれる招致都市のテクニカルプレゼンテーションに合わせて公表される。
次回も関係者の話を交えながら、招致活動で重要な役割を担う広報戦略に迫ってみたい。
<この項、了>
2020年夏季オリンピック・パラリンピック招致
2020年夏季オリンピック・パラリンピック開催をかけて現在、東京(日本)、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市が招致活動を展開。今後は5月のスポーツアコード(ロシア・サンクトペテルブルク)や6月のANOC(国内オリンピック委員会連合)臨時総会、7月のテクニカルプレゼンテーション(ともにスイス・ローザンヌ)などを経て、9月7日のIOC総会(アルゼンチン・ブエノスアイレス)で開催都市が決定する。