フェラーリ代表が語る小林可夢偉=赤井邦彦の「エフワン見聞録」第3回

赤井邦彦/AUTOSPORTweb

ドメニカリからの提案

 ドメニカリ自身は小林の力をよく知ってはいたが、フェラーリF1に乗せるつもりはなかった。しかし、小林は2012年末に突然ザウバーから契約を切られ、13年はどこのチームでも走ることができなくなった。それを知ったドメニカリは、小林がどんなクルマでもいいからレースをしたいというならフェラーリで走ってみたらどうかと宮川に提案。宮川は小林とその話を検討した結果、13年はフェラーリの推薦でAFコルセに入ってWECを戦うことを決心した。これが小林がAFコルセで走ることになった顛末(てんまつ)だ。

「小林は当初F1にこだわっていたようでしたが、そのF1にシートがなくて1年間レースから遠ざかるようなことがあるのは決して褒められたことじゃないと考え、GTレースでもよければ是非フェラーリで走らないかと誘いました」

 ドメニカリの提案はフェラーリと契約し、レースはフェラーリに近いAFコルセのマシンに乗るというもの。小林もフェラーリと契約できるなら前向きに考えるということで、結果的に小林はフェラーリと契約し、AFコルセでWECを走ることを決めたのだ。

可夢偉、跳ね馬入りの可能性は?

 フェラーリとの契約は現段階では1年ということになっている。つまり、今年限りでフェラーリと小林の契約は切れ、小林は14年に向けては再びF1チームにシートを求めて就職活動をすることになる。

 では、フェラーリは14年に小林をドライバーとして採用する可能性があるのだろうか? ドメニカリはその質問にはこう答えた。

「ない。というより、現時点ではフェラーリのF1チームに小林を迎える計画はないです。今年は(フェルナンド・)アロンソと(フェリペ・)マッサという素晴らしいドライバーがふたりいます。マッサは今年の末で契約が切れるが、彼が来年もフェラーリで走らないと決まったわけではありません。契約の延長があるかもしれないし、ないかもしれないのです」

「小林に関しては、あくまで2013年の契約で、その後のことは何も話し合っていません。彼にはWECのGT ProクラスでAFコルセが再びタイトルを獲得するために努力してほしいということです」

 この厳しい条件でも小林はフェラーリでWECを走ることを選んだ。そこには、彼なりの考えがあるのだろうが、現時点では私は小林と連絡が取れていないので、彼の考えは知る由もない。できれば、WEC開幕戦シルバーストン6時間レースの現場で小林に話を聞いてみたい。

<了>

『AUTOSPORTweb』

【AUTOSPORTweb】

F1やスーパーGTの最新情報をリアルタイムでお届けするモータースポーツ専門サイト

2/2ページ

著者プロフィール

赤井邦彦:世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント