「カープスタイル」で夢を追う――ドミニカで響く日本野球
「日本で野球をすれば、成長することができる」
日本式のハードトレーニングでメンタル強化も図っている 【撮影:龍フェルケル】
毎朝の練習前、フェリシアーノは選手たちにこう話している。
「強いメンタルを育むことができなければ、良い選手にはなれない」
日米でプレー経験のあるフェリシアーノは、日本の「野球」とアメリカの「ベースボール」の違いをこう解釈している。
「日本人は野球に忠誠を尽くし、懸命に働く。アメリカ人は野球をもっと楽しんでプレーする。彼らにとってのベースボールはよりシンプルで、ドミニカ人にはその方が合っている。でも日本で野球をすれば、能力を伸ばし、選手として成長することができる。日本で成功するには、日本人のように我慢強くならなければならない」
ダイヤモンドの原石を育てるカープアカデミー
WBCで世界一に輝いたドミニカ。広島は、眠ったダイヤの原石を狙う 【撮影:龍フェルケル】
ただ、ヤンキースやテキサス・レンジャーズなどでスーパースターの地位を築いたソリアーノや、MLBで8年間プレーしたペレスを輩出しているのも事実だ。
フェリシアーノは言う。
「正直、カープアカデミーに来る選手の才能はカネのあるMLBより劣る。でも、彼らも可能性を秘めている」
12年開幕時点のMLBに、ドミニカはアメリカに次いで多い95選手を送り込んだ。13年のWBCでMVPに輝いたロビンソン・カノ、1番としてチームを牽引したホセ・レイエス、守護神のフェルナンド・ロドニーはメジャーでもトップクラスの実力だ。毎年400人近くがアメリカの球団と契約を結ぶドミニカには、ダイヤモンドの原石が大量に眠っている。そこに目を付けた広島の狙いは間違っていない。
「皆さん、ドミニカから良い選手を送ります。頑張ります。お願いします!」
日本語でそうメッセージをくれたフェリシアーノの下、アメリカ流のシビアな世界で成功できなかったドミニカ人選手たちが、カープスタイルのハードワークでセカンドチャンスをモノにしようと努力している。
ガブリエルやポランコが目指す、広島経由MLB行きの夢――。
ドミニカの「世界で最も野球選手を生み出している町」から、ひとりでも多くの若者が夢をかなえることを願ってやまない。
<了>