戦術の分岐点で振り返る日本代表の歩み=チームの礎はいかにして形成されたのか

西部謙司

日本の強さを印象づけた韓国戦

香川(青)の2ゴールなどで快勝した韓国戦は日本の強さを印象づけた一戦だった 【Getty Images】

 3−0と勝利した11年8月の韓国との親善試合は、日本の強さを印象づけた一戦だった。
 
 アジアカップ優勝後、ザッケローニ監督は彼を有名にした3−4−3に着手している。しかし、テストはことごとくうまくいかなかった。3−4−3に慣れている選手もおらず、ごく短い活動期間しかない代表チームで浸透させるのは難しかった。
 
 いつものメンバーで手慣れた4−2−3−1に戻してみたら韓国に圧勝した。3−4−3はもともとオプションという位置づけだったが、使い道がないまま今日まで保留されている。
 
 3−4−3は攻守に相手をハメ込む戦術で、例えばどうしても1点がほしいときに早くボールを奪い、早くチャンスを作りたい状況での使用には向いている。ただ、W杯予選ではそうした場面は少なかった。W杯本大会で強豪と対戦すれば、まず守備とカウンターが優先されるだろうから、今後も3−4−3の重要度はさほど高くならないのではないだろうか。

本田のゼロトップは定着しない

 フランスに勝ち、ブラジルに完敗した12年10月の欧州遠征は久々の強豪国との対戦だった。真っ向から挑んで0−4と大敗したブラジル戦は興味深い。
 
 パスワークは通用したが、日本のチャンスは少なかった。前線からのプレスも空回り気味。ただ、ある程度の手応えもつかめた。6月のコンフェデレーションズカップでの再戦で、同じ戦法でいくのか、それとも守備的に修正するのか。おそらく大きくは変えないだろう。
 
 ただ、この試合で使った本田の“ゼロトップ”は定着しないと思う。本田のトップ+香川のトップ下は、本田か香川かのトップ下論争に終止符を打つ妙手にもみえる。だが、ゼロトップは戦術的に変更点が大きすぎるのだ。
 
 バルセロナのゼロトップは、ウイングが相手のディフェンスラインをコントロールすることで成立している。サイドが高い位置に張ることで、そこにディフェンスラインを押しとどめ、メッシが引いてラインの手前で数的優位を作る。しかし、ザッケローニの構想はその反対なのだ。相手のラインと駆け引きしてコントロールするのは1トップの役割。サイドプレーヤーは中央へ引き、空けたサイドにSBが進出して外をえぐる。ゼロトップではなく、いわばゼロウイングである。
 
 トップの層が薄いのは事実であるため、ゼロトップに舵(かじ)を切る可能性もあるかもしれないが、これまでうまくいっている戦術のディテールをご破算にするとは思えない。
 
 ブラジルをはじめ、イタリア、メキシコと対戦するコンフェデレーションズカップは日本の真価が問われる。ここでの内容によって、W杯までの道筋が決まってくるだろう。

<了>

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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