大学バスケに「完敗」のWBC、なぜ米国で盛り上がらないのか?

甲田 剛

米国でWBCが盛り上がりを見せない中、代表チームが敗退した際は米国からWBCが消える危機となる。写真はトーリ監督。 【Getty Images】

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕してから1週間以上が経った。米国でも第1ラウンドが7日(日本時間8日)から始まったが、現時点で大きな盛り上がりは見られない。米国代表が初戦のメキシコ戦に敗れたことも、大会直前に出場辞退選手が出たことにも、それほど「ショッキング」な結果としてとらえられてはいないように見える。

 アリゾナ州で行われたメキシコとの初戦では、球場に詰めかけた約4万人の半数以上がメキシコのファンで占められたという。米国代表は母国での開催ながら、敵地の雰囲気の中で戦わなくてはいけなかった。球場には他国のファンが多数かけつけているが、なぜ米国でWBCが盛り上がらないのか。

大学バスケットボールに完敗ムード漂うWBC

 米大リーグの開幕直前で、選手に最高のパフォーマンスが期待できないという理由もあるが、「強力なライバル」の存在も見逃せない。米国では毎年3月中旬から4月初旬の約3週間、全米大学体育協会(NCAA)が主催する大学バスケットボールの全米チャンピオンシップが開催される。日本で言えば、選抜高校野球のような大会で地上波でも放送される。普段スポーツに熱狂的でない人でも母校の応援に熱が入り、昨年の「マーチ・マッドネス」の広告セールスはNFLやMLBなどの米四大スポーツのプレーオフのセールスを上回ったという。

 オバマ米大統領も就任以来、ESPNの番組企画で上位進出校を予想するなど、国民的スポーツ・イベントとして注目度は高い。WBCが行われている現在も、スポーツ番組はトーナメント出場に向けて熾烈(しれつ)な戦いを続ける大学バスケットボールのゲーム中心に報道。一方のWBCはMLBネットワークで放映されているものの、注目度を比較すると「完敗ムード」が漂う。スプリング・トレーニングに訪れるメジャーリーグファンの間でも温度差があり、第3回にして「熱狂的な野球ファンのためのイベント」というイメージが定着し始めている。

米国からWBCの興味が消える危機

 そんな中で米国ファンの関心を集めるためには、これまでも議論されているように開催時期の再考が必要だ。前途多難は承知の上だが、サッカーのワールドカップのようにシーズンを中断して行うのが理想だろう。米国の四大スポーツは微妙に開催時期がずれており、プレーオフなどのメーンイベントがかぶらないような配慮がされている。そのため、年間通して多くのメジャースポーツを楽しむことができる。

 4月から10月が「ベースボールの季節」なのであれば、その期間に開催することがファンの興味を呼ぶ最善策ということになる。大会前、米メディアは米国代表が期待外れの結果に終われば、「米国のベースボールファンのWBCに対する興味が消えてしまう恐れがある」と危惧(きぐ)していた。第1ラウンド敗退となれば、その状況が一気に現実味を増す。米国が決勝に進み、ワールドチャンピオンを懸けて戦うような状況になれば、関心が少しは高まるだろうが、果たして――。

<了>
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