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WBC韓国敗退の理由――勝つための準備はできていたか?
生まれた余裕と隙、オランダを過小評価
WBC1次ラウンド敗退に終わった韓国、勝つための準備はできていたのだろうか?(写真はリュ・ジュンイル監督)
WBC1次ラウンド敗退に終わった韓国、勝つための準備はできていたのだろうか?(写真はリュ・ジュンイル監督)【Getty Images】

 WBC1次ラウンドB組は台湾、オランダ、韓国が2勝1敗で並ぶも、得失点率差で韓国の脱落が決まった。韓国にとって大きな痛手となったのは、初戦のオランダ戦、0対5での敗北だ。

「全勝で2次ラウンドに進むのが目標です」

 韓国代表のリュ・ジュンイル監督は2日のオランダ戦を前にこう抱負を語った。しかしそれは目標であって、自信をうかがわせるものではなかった。なぜならその時点で選手たちのコンディションはピークには至っていなかったからだ。

台湾とオランダの1次R突破対策は、韓国よりも上回っていた

 初戦を前日に控えた3月1日、チームの4番に座るイ・デホはこう話した

「(ピッチャーの)ボールは見えているけど、体が対応できていないです。練習試合を5試合やったけど、感覚はまだつかめていないですね」

 決戦を前に万全の状態で試合に臨むというのはどのチームであれ容易ではない。ただこれまでの韓国は、どんな状況であれ、持ち前の集中力で短期決戦を乗り切ってきた。しかし今回の韓国はそれを整える以前に足をすくわれた。

 オランダのヘンズリー・ミューレンス監督が語った、韓国戦に勝利したあとの言葉がそれを象徴している。

「第1回大会でセミファイナルまで進み、前回は準優勝した韓国に勝てたことは、次の台湾戦に向けても自信になります」


 これまで常に挑戦者の立場で立ち向かっていた韓国は、いつしか挑まれる側となった。そしてそこには余裕と隙が生まれていた。

 その余裕と隙の一つに、韓国はオランダを過小評価していた点がある。試合前日、キム・テギュンのオランダ投手陣に対する評価はこうだった。

「戦力分析したところ、迫力があるピッチャーはいなかったです。背が高くてボールが速い選手が多いみたいだけど、打てないことはないと思います」

 しかし打線は散発4安打無得点。試合後のリュ・ジュンイル監督が「最悪のゲームをしてしまった。韓国国民のみなさんに申し訳ない」と語る、謝罪での船出となった。


 韓国は4日のオーストラリア戦に勝利するも、5日の台湾戦には5点差以上つけて勝たないと2次ラウンドには進めないという、厳しい状況で対戦を迎えた。この試合で韓国は台湾に3対2で勝利したが、台湾には韓国に対する入念な準備がうかがえた。

 例えば、ストレートに強く、早いカウントから積極的に打ちにいく2番チョン・グンウと、同様にストレートに強い7番カン・ミンホに対し、台湾バッテリーは極力、真っ向勝負を避けていた。この2人は共に一度火がつくと止まらないタイプでもある。大量失点だけは避けたい戦いで、台湾の「歩かせてもよい」という攻め方は有効だった。

 台湾の謝長亨(シャ・チョウテイ)監督は2次ラウンド進出を決めた要因を、力強い眼差しでこう話した。

「WBCのような国際大会は強力なチームに合わせた、たくさんの準備が必要です」

 台湾とオランダの1次ラウンド突破対策は、韓国よりも上回っていたように思える。

成熟への過渡期で足踏み、1次R敗退の影響は大きい

 また今回の韓国代表には、球界における「成熟への過渡期」を迎えていると感じた。韓国プロ野球は2008年の北京五輪での金メダル獲得、翌09年のWBC準優勝をきっかけに、人気の絶頂期を迎え、その後も過去最高の動員数を更新し続けている。代表チームの活躍がプロリーグの成熟に大きな影響を与えたのだ。その間には兵役免除のような動機づけに頼る部分があったが、これからは、日本がそうであるように「自分たちの野球のために戦う」段階に差し掛かろうとしている。

 代表チームが及ぼすプロリーグへの波及効果は、台湾が目指す姿でもある。台湾の彭政閔(ホウ・セイビン)はオーストラリア戦の後にこう話している。

「台湾は野球人気が低迷しています。だからWBCのような国際大会で結果を出すことは、(人気回復の)力になります」

 また謝長亨監督も「台湾野球のブランド価値を高めたい。スポーツは勝つことから始まるので、東京ラウンドで勝つことが重要です」と話す。韓国の敗退は成熟への過渡期で足踏みとなったが、台湾の2次ラウンド進出はかつての韓国のように大きな前進となった。


 他チームから警戒され、何かを得るためではなく、自らのプライドを保つために挑んだ、今回の韓国代表。初戦での敗戦が1次ラウンド敗退につながるとは予想していなかっただろう。

「野球はメンタルゲームです」。リュ・ジュンイル監督はそう話す。韓国代表にオランダに勝つための準備ができていただろうか。2次ラウンドに入ってからギアを入れようと考えてはいなかっただろうか。今回の敗退が、やっと到達した成熟への過渡期から逆戻りしないことを願うばかりだ。


<了>

室井昌也
室井昌也
1972年、東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。現在「室井昌也の韓国野球を観に行こう!」(ラジオ日本)に出演中。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。

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